唯一無二の存在感 石粉粘土で咲かせる花 澤田節子さん 【茂原市】

 石粉粘土工房『花ごよみ』を主宰する澤田節子さんは、茂原市緑が丘在住。自宅兼工房には石粉粘土で作った色とりどりの作品が飾られている。石粉粘土とは石の粉に接着剤が練り込んである粘土で、形を作り乾燥させた後アクリル絵の具で色付けをする。出来上がった作品は思いのほか軽く、優しい手触りで落としても壊れにくい。また、欠けてしまった部分も新たに粘土を足して着色すれば修復も容易にできる。澤田さんはこの素材に魅力を感じて、今まで多くの作品を作り出してきた。
 作品のモチーフの多くは、花。制作はまず花器から取り掛かる。大ぶりの花瓶でも、木のツルを編み込んだ籠でも表現は自由自在。そして、その花器に活ける花や木の枝を1つ1つ作成していく。「頭の中にイメージが浮かんだら、忘れないうちに作り出します」と、澤田さん。下絵を描いたり、写真や実物を参考にすることはないという。「亡き父はタイル職人で、図面も書かずに頭の中に描いたものをそのまま形にできる人でした。その感覚を父からのプレゼントとして受け継いだと思っています。また泥遊びや木登りなど、毎日暗くなるまで自然の中で遊んでいた子ども時代が私の大きな下地になっています」と、語る。
 澤田さんは市原市出身。市原市内の公立幼稚園で27年間幼稚園教諭として勤務し、園長も務めた。子どもが大好きで子育て支援にも注力していたが、椎間板ヘルニアと腸に持病を抱えて痛みに苦しみ、体調を崩してやむを得ず退職したのは47歳の時だった。
 千葉市内のデパートで石粉粘土の作品展に偶然立ち寄ったのは、退職する少し前の事。石粉粘土の限りない可能性に心惹かれ、一気にその魅力の虜(とりこ)に。その後石粉粘土の基礎を学び、当時の市原市光風台の自宅で教室を開いた。「光風台小学校で子どもたちのために作品展を行ったことをきっかけに出会いの輪が広がり、様々な所で出張教室も行うようになりました」と、澤田さん。教室は軌道に乗り、常に満員状態だった。
 東日本大震災が起こると、ニュースで伝えられる被災地の惨状に衝撃を受け教室が続けられないほど気持ちがふさぎ込んでしまう。宮城県では市原工芸会の会員だった知人が移住後間もなく被災。津波によって家財すべてを失ったと聞き、必要な画材一式を送るなど懸命に支援した。教室の仲間たちと東北復興の為のチャリティも行った。心を痛める日々の中でその時出来ることに1つ1つ励んでいくうち作品を作ることで新たに進んでいこうという気持ちが芽生え、出来上がったのが大地に根付く大きなひまわり、『大地』という作品。「完成には2年程かかりました。思い出深い渾身の一作です」と、振り返る。
 時と場所は変わっても常に人の役に立ちたいという信念が澤田さんを貫いていて、周りには自然と人が集まる。笑顔を絶やさない澤田さんは、まさに置かれた場所で咲く花のようだ。「表現するにはエネルギーがいる」という澤田さんのエネルギーは、どこから来るのだろう。「痛みと闘いながら生きてきたということが大きいと思います。幼稚園教諭として最後まで全うできなかったという思いもぶつけています。粘土で表現したいという激しい気持ちに突き動かされてきました」と心の内を語った。

夢は令和の作品展

   7年前、長男家族との同居を機に茂原市へ転居。現在は孫の成長を間近に見守りながら、制作活動を続ける時間を大切に過ごしている。『花ごよみ』のメンバーは、澤田さんの他に7名。公民館などでの石粉粘土教室では講師の澤田さんの右腕となって参加者を指導し、スタッフとして全面的にサポートする。澤田さんにとって信頼のおける仲間だ。工房へは月に2度昼食持参で集まり、共に午前と午後を制作に費やす。「作品を作っていると頭が空っぽになります。楽しくて他の事が考えられません」「工房に来るとずっと笑いながらおしゃべりをして、手も動かして、いいことばかりです」と、テーブルを囲む風景は明るい。
 澤田さんは昨年11月、自宅にて作品展を開催。近所の人々や古い友人たちが訪れ大盛況だった。澤田さんの作品を買い求めたいという人は後を絶たないが、チャリティの出品作以外は販売を行っていない。自分の作品は、しっかりと顔の見える相手に持っていてほしいという気持ちからだ。「平成の終わりに作品展ができたので、令和でも作品展をすることが今の夢です」との澤田さんの言葉は、ファンには待ち遠しく響くことだろう。次に澤田さんと工房メンバーの作品に会えるのは、10月17日~20日に市原市市民会館で予定されている『市原工芸展』。19日には、澤田さんの実演コーナーもある。興味を持たれた方は、是非会場へ。


問合せ:澤田さん
TEL.0475・47・3880 sodenekop@gmail.com

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