未来に残したい、ウミガメの来る砂浜 一宮ウミガメを見守る会【一宮町】

 2020年東京オリンピックでサーフィンの会場となる、長生郡一宮町の釣ヶ崎海岸。この一宮の砂浜には、絶滅危惧種のアカウミガメが産卵にやって来る。日本の砂浜海岸は北太平洋で唯一のアカウミガメの産卵場所で、一宮町を含む九十九里浜はその北限だ。一宮町在住で元東邦大学教授の秋山章男さんが1994年から始めたウミガメの上陸・産卵の調査を引き継ぎ、『一宮ウミガメを見守る会』が2012年に発足。調査及び環境保全に関する啓発活動に取り組んでいる。

ウミガメの足跡探しツアー!

 アカウミガメは毎年5月~8月の日没から夜明けまでの暗い間に上陸し、卵を産む。会ではこの期間、毎朝欠かさず足跡調査を行っている。ウミガメの上陸した足跡を発見したら写真を撮り、日付・時間・場所・後足跡幅・足跡の軌跡・産卵の有無を記録。産卵が確認されたら、その回りに棒を立てひもで囲う。孵化は、産卵から約2カ月後。すべての子ガメが脱出して10日以上経ってから、今度は巣の中を調べる。アカウミガメがどの場所に何個の卵を産んで、何匹の子ガメが海へ帰っていったのか、資料として残している。   7月31日(水)、18名の小中学生と大人18名、スタッフ10名がアカウミガメの足跡調査に参加した。子どもを対象とした足跡探しツアーは、今回で4回目。早朝5時の集合に、子どもたちは探検気分で胸を躍らせていた。集合場所に展示されている写真を見て、ウミガメの足跡がブルドーザーの通った後のようだと初めて知り、驚いている親子もいた。『一宮ウミガメを見守る会』会長の渡部明美(わたべあけみ)さんが説明を始める。「地元中学生の8年間の自由研究の結果から、一宮町の海岸では新月の夜に上陸が多い事が分かりました。8月1日が新月なので、夜中月明かりのない今日を選んで、みなさんに来てもらいました。今年は現在まで上陸3回、産卵3ケ所と数が少ないです。大自然が相手なので、今日足跡が見られるかどうかは行ってみてのお楽しみです」。砂浜に出ると、海はサーファーとすぐ近くに見える漁船ですでににぎやか。昇ったばかりの朝日がさす中、一宮川河口と太東海岸を結ぶ約7キロの砂浜のうち、2キロを歩いた。
 ほどなく7月27日の産卵場所に到着。「母ガメは海から歩いてきて、短い後ろ足で約60センチの深い穴を掘り、1回平均100~120個のピンポン玉そっくりの卵を産みます。産卵から約2カ月で卵が孵化して、子ガメたちが海に戻っていきます」との渡部さんの話を聞き、卵の数の多さに子どもたちは驚きの声を上げた。しかし実際に大人になれるのは、5千匹に1匹といわれている。参加者全員が囲いの周りに集まって、砂の下に育まれているたくさんの命の無事を祈り、子どもたちがウミガメの巣の保護を訴える立札を立てた。  その後目標の突堤まで歩いたが、この日は母ガメの足跡は見つからなかった。砂浜に注目して歩くと、ミユビシギやカモメのような鳥や、二ホンイタチやウサギなど、他の動物の足跡が見られた。白子町立白子中学校1年の長島壮大(ながしまそうた)さんは、「ウミガメの足跡を見られなかったのは残念でしたが、いろいろな足跡があって面白かったです。夏休みの科学論文で動物の足跡について書こうと思っているので、もっと本やインターネットで調べるつもりです」と話した。千葉市から参加したあすみが丘小学校3年の田辺桂大(たなべけいた)さんは、「早起きしてお腹がすいたけど、楽しかったです。学校で俳句の宿題が出ているので、今日のことを詠みたいです」と、疲れも見せずに波打ち際で遊んでいた。

考えよう!私たちに出来ること

 渡部さんは最後に、「手のひらに乗るほどの小さな子ガメは、砂から出て海へ向かう時、車のタイヤ痕があるだけで前へ進めなくなってしまいます。みなさんもウミガメや他の生きもののことを考えて、海辺で遊んだ後は砂山や掘った穴を元の状態に戻して、ゴミなどもきちんと持ち帰ってほしいです」と、1人1人の小さな心がけの大切さを伝えた。「今日は残念ながら足跡が見られませんでしたが、毎朝私たちが歩いているので、夏休み中いつでもまた来てください。10月以降、子ガメが巣立った後の巣の発掘調査もあります。興味のある人はご一緒しましょう」
『一宮ウミガメを見守る会』では、フェイスブックに日頃の活動・ウミガメに出会った時の対処法などを掲載している。随時調査仲間を募集中。詳細は問い合わせを。 問合せ:一宮ウミガメを見守る会 渡部さん 


TEL.090・1807・7139
メールkameakemi777@yahoo.co.jp

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