唄い継ぐ文化遺産 東浪見甚句 東浪見甚句保存会【長生郡】

『ハア キタサッサ ヨイサッサ ハ コラサット チョイサ
ハア~ カモメ来て鳴け東浪見が浜へ 今日も大漁の旗の波
太東岬で入熊見れば 明日も大漁か鳥の群』 (東浪見甚句歌詞の1部)

九十九里浜の南端、現在の長生郡一宮町東浪見(とらみ)では、江戸時代初期から昭和初期まで地曳網漁が村の人々の生活を支えていた。太東岬東南沖の『入熊漁場』では鰯が群遊し、海が凪いでさえいれば大漁に村がわいた。豊漁を祝う酒の席などで唄われる『さわぎ唄』が『二上がり甚句』(にあがりじんく)と呼ばれ、東浪見甚句の起源。二上がりとは三味線の調弦法の一つで、派手で陽気な調子、甚句とは七七七五調の4句からなる唄だ。昭和38年6月の保存会発足を機に、土地の名にちなんで『東浪見甚句』と名称が決定された。

黒潮に恵みを受けて

『東浪見甚句保存会』初代会長は故長谷川宝さん。東浪見で養鶏を営んでいたが、漁民の生活に根差した文化を保存・伝承したいとの思いで、年寄りの唄を録音し、地元郷土史家と文書を作るなどして県に文化財指定を申請。昭和40年4月21日、『東浪見甚句』は千葉県無形民俗文化財第39号に指定された。宝さんの孫の松本勇子さん(68)は子どもの頃、週に一度長谷川さん宅に近所の女性が集まり、周りから『あんなことをやって何の足しになる』と言われながら夜中まで稽古していたのをよく覚えている。「食事の度に祖父は『勇子たちが大人になった時に、これが必ず大切なものになっているから』と言っていました」と松本さん。
 その後宝さんの長男で、松本さんの亡父である八郎さんが第2代会長として会を引き継ぎ、平成元年には、私費で唄い手と踊り手に万祝半天(まいわいばんてん)をあつらえた。万祝半天とは正月などに船主が船方に贈る晴れ着で、背中に恵比寿大黒や鶴亀の絵柄が染められている。その万祝半天を着て、松本さんを含む保存会のメンバーは海外公演にも足を運んだ。平成2年にはシンガポール、平成4年にはインドネシアに国際親善使節団として派遣され、平成8年には、オランダで世界民族のオリンピックと呼ばれる世界民族芸能祭の第1回に日本の代表として出場した。
 松本さんは亡母から受け継いだ民謡舞踊『咲雀会(さくすずめかい)』を主宰する傍ら、現在保存会の代表を務めている。保存会は発足以来56年目を迎え、会員は18名。指定文化財といっても補助金があるわけではなく、限られた時間の中での活動は容易なことではない。しかし、松本さんには民謡を守っているという気概がある。「興味を持つ人はまれ」という現状の中、文化の灯を絶やさぬよう、「先人たちの思いをつなごう」と活動を続けてきた。「次世代の担い手を探していますが、唄も踊りも1年や2年で身につくものではないので、子どもや若い人たちに関心をもってもらいたい」と話す。松本さんの母校でもある東浪見小学校では、毎年運動会で全校生徒が『東浪見甚句』を踊る。保存会が指導し、すでに30年ほど続いているそうだ。
保存会の舞台は、年に2回春と秋、一宮の玉前神社の境内・参道で開かれる上総国さすが市や一宮町の文化祭などの諸行事で観ることができる。毎年11月に行われる『咲雀会』の発表会でも、東浪見甚句を披露する。

保存会に力強い助っ人!

「保存会にとっては、神様のようです」と松本さんが信頼を寄せるのが室川正治さん。一宮町出身で、15才で横須賀の陸上自衛隊少年工科学校に入校、40年間全国各地で勤務し、定年退職後睦沢町に住んでいる。「全国を回って仕事をしていた時、心の風景として思い出されたのは一宮の海、威勢のいい地曳網に、それを唄った東浪見甚句でした。唄い手の高齢化など、東浪見甚句の存続・普及に危機感を感じ、長く唄い継がれるよう、多くの人に聞いてもらいたい一心で自ら応援団を名乗り出ました。CDを自主制作し、無料で配布しています」と室川さんは話す。一宮町教育委員会にも働きかけ、町内の小中学生の希望者にCDを渡す準備をしている。「唄があっての東浪見甚句。若い人に1人でも2人でも習ってみようと思ってくれる人が出てくれることを願っています」さらに、「興味をお持ちの方には、CDを手渡しさせていただきたい。取りに来ていただくか、私が届けることもできますので、まずはご連絡ください」とのこと。詳しくは問い合わせを。
問東浪見甚句保存会
松本さん TEL.080・1284・4715
CDについて
室川さん TEL.090・7803・4737

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