いすみの「水」にまつわるドライブコース

いすみの「水」にまつわるドライブコース
~夷隅川の源流を訪ねて~

 勝浦市の海岸の崖近くから始まって大多喜町やいすみ市西部南部を通り、岬町の河口からまた海へと流れ、昔から農業や生活に恵みをもたらしてくれている夷隅川。5月11日(土)、千葉県いすみ環境と文化のさとセンター主催の往復約80キロのドライブ、『夷隅川源流を訪ねる小さな旅』に同行取材した。
 初めに同センターの図書室で講師の『夷隅郡市自然を守る会』の大藪健さん(68)から夷隅川についての説明を受けた。夷隅川の流域面積は約300平方キロで千葉県第1位、長さは約68キロで第4位であり、流域には多くの生物が生息している。「自然豊かな夷隅川のルーツを求めるという魅力的な行事をお楽しみ下さい」との言葉の後、参加者12名が乗り合わせながらそれぞれの自家用車で出発。
 海沿いの国道128号線を勝浦の海に向かって南に下り、昔『おせん』という名の娘が崖から身を投じたといわれている『おせんころがし』近くの丘陵上部にあたる上大沢で車を下り、山道を少し登って源流を確かめに。標高195メートルの一番高い所まで行くことはできなかったが、朝から降り続いていた小雨が岩盤や地面を流れ、源流の道を分かりやすく示してくれていた。参加者の女性は「夷隅川の源流を自分の目で見られてよかった」と話した。雨の中、熱心に写真を撮る姿も見られた。
 上大沢集落では晴れていたら海の素晴らしい景色が見えるという場所に立ち寄った。水の得やすい丘陵に接した谷津田が冠水した際、田んぼの水を抜くために先人が作ったという道を水が滝となり落ちていくのを切り立った崖の上から見ることができた。
 少し北に上り、勝浦市植野の日蓮宗、寂光寺で千葉県天然記念物になっている立派な大椎を見上げながら同寺の住職から話を聞いた。1264年に小松原で念仏宗徒の東上影信に襲われた日蓮大聖人の一行。弟子を失い、大聖人自身も怪我を負った。その際、この寂光寺に7日間滞在し、信仰を広めたのだそう。
 県道82号線に入って更に北に進み、夷隅川の支流である古新田川と台宿川の合流点付近の橋を渡り、『腰古井』で有名な『吉野酒造』を見学。天保元年に創業、築100年以上の檜造りの酒蔵では、敷地内の山に深く堀った横穴式洞窟から湧き出る水を使い、杜氏と岩手県から来ている4名の蔵人の手により美味しいお酒が守られている。仕込み水をいただいたが、とてもまろやかでおいしい軟水だった。大きな釜に水を入れ、その上に自社精米した米を入れた大きなせいろを載せ、米を蒸す。昔は薪を使っていたが今はバーナーで行っている。取材時の5月には酒造りは行われていなかったが、釜を入れるための巨大なかまどを見ることができた。麹室では蔵人たちが裸になって手作業で麹菌を作るのだそう。コンピューターの石うすで自社精米したときに出る糠は他社を通じてにわとりのえさにしたり、米菓『柿の種』の原料としても使われるので廃棄物が出ないのだとか。ちなみに、酒における甘口と辛口の違いは、発酵日数にもよるが仕込み水が硬水だと辛口、軟水だと甘口になるそうだ。「日本酒は手をかければいいものができる。手造りの伝統を引き継いでくれる次世代の蔵人さんを探しています」と蔵元の息子さん。
 雨が強くなっていたため車中で各自お昼を食べた後、更に82号線を北上して大多喜町に入り、松野の交差点を左折し国道297号線に入る。佐野交差点の少し先、左手にある川畑集落へ。三滝が見下ろせる滝見橋は絶景ポイント。山あいを夷隅川の流れがなだらかな滝となって落ちていくのが見えた。上流には勝浦の水道水になっているという浄水場の取水堰があった。
 悪天候のため、この後は訪ねる予定であったポイントを車で通過するだけになってしまった。297号線沿いにある大多喜城址下の夷隅川の一部である御禁止川と呼ばれた川で泳いでいた、食すと不死身になると伝えられていたムラサキゴイを大多喜城主が参勤交代時に将軍家に献上したという話を大藪さんから聴いた。晴れた日に、見事な大井戸とともに是非再び訪れてみたいものだ。
 最後は大多喜城址周辺の昔の風情の残る町を通り抜け、センターへの帰路についた。「1人では見つけることのできない名所に行けてよかった」と参加者。多くの自然に囲まれ、いすみ市内を蛇行する夷隅川を何度も渡った今回の小旅行。夷隅川の偉大さを改めて感じることができた。

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