遠くまで響く声が元気の印

観客を感動させないと意味がない
ヨーデル歌手 渡辺 正男さん

 2月1日(日)、九十九里海岸蓮沼にある道の駅オライ蓮沼では、歌手のヨーデル渡辺さん(65)によるライブが11時半からと13時からの2回30分ずつ行われた。渡辺さんの「蓮沼のみなさん、こんにちは!」という明るい呼びかけでライブはスタート。30分という短いライブの中で7曲を熱唱しながらも、「ヨーデルの声は3㎞先まで届くといわれていて、スイスやオーストリアの山々で囲まれた中で生活している牧童たちの間で発展したものです。山に入ったら数カ月戻らない家族が元気なのか安否確認に使われたんです、今の携帯みたいなものですね」とヨーデルの由来も説明する。この日は大寒波、海が近いオライ蓮沼に吹く風はとても強く冷たいものだったが、渡辺さんの歌声に来客者たちが足を止める。ライブ後に、「とてもいい声ですね」と話しかける女性の姿も納得の声である。
 渡辺さんがヨーデルを始めたのは、小学生の頃。ラジオやテレビから流れるヨーデルに魅せられ、独学で歌い始めた。ギターを覚え、20歳の成人の日には、式に参加せずに都内で行われたオーディションへ向かった。「阿久悠さんが審査員になっていて、歌手希望の人が大勢集まりました。その中で、選ばれたのは私と女性2人。しかし、ヨーデルは歌謡曲ではない。賞は取ったけれど、デビューをしたわけではないんです」という渡辺さんは、その後、いわき市にある財政危機のクラブで歌うように。「1日2曲くらい歌えばいいと思った」ら大違い、夜の6時から11時近くまで連夜歌い続けた。10日過ぎると超満員になったクラブ。現在も浜離宮近くのライブハウスでエレキギターと演奏したり、有名人の打ち上げパーティに呼ばれることもある。女子サッカー日本代表の宮間あやさんの応援ソングも作りCD販売をした。ただ、自信にはなるものの、歌だけでは生きていけないと冷静に考え、サラリーマン勤めとの兼業を貫いてきた。その苦労もまた、渡辺さんの味わい深い声にも生きているのかもしれない。
 今のレパートリーは70から80曲ほど。クラブ時代に覚えた五木ひろしや森進一などの演歌。軽井沢の別荘で聞いた鳥の鳴き声を取り入れたものや、九十九里や蓮沼を描いたオリジナル曲。観客からアンコールで曲名をあげられることも珍しくなく、最近ではアナと雪の女王『レット・イット・ゴー』も求められる。「世代が変われば、歌う曲も変わります。毎週金曜日に国民宿舎サンライズ九十九里で夜8時からミニコンサートをしています。5年が経ちますが、毎回来てくれる方もいるんです」と話す渡辺さんは、「ヨーデルのみを歌うコンサートはないんです。参考にするものがないから独自で開発していくしかない。スイスのヨーデルは一種独特で、ただそれだけをやっても面白みがない。所々で織り込んでいくんです」と饒舌に続ける。裏声と地声を繰り返し切り替えて歌うヨーデル。そんなヨーデルにも難易度がある。ひっくり返す声の数や音の差が激しいほど難しくなるのだ。誰でもできるとは限らないが、どうすれば上手にできるのか。コツは、「とにかく練習すること。簡単な曲をやっていてもうまくはならないので、難しいものに挑戦していく」ことだとか。
 ギター一本でマイクの前に立ち、喉を震わせる渡辺さんに、寒さなど関係ない。「歌っているとアドレナリンがでるのか、身体が温まってきますね。聞いているお客さんが風邪ひかないか心配です」と気遣いを見せるが、観客が足を止めるのも、その声に惹かれるからではないだろうか。屋内で行うライブだとまた違った味わい深さを感じられるという。パソコンやスマートフォンを使って音楽サイトを見れば、渡辺さんの歌も機械を通して聴くことはできる。それでも望むのは、「まずは現物を見て欲しい!」ということ。「ライブをしているとお客さんの顔はよく見えます。昔を思い出すと涙を流される方、娘と握手させようと連れてきたんですと言ってくれる方。会場の全員が握手して帰ってくれたこともあって忘れられません」と渡辺さん。これからも『地元の人々に喜んでもらえる』ことをモットーに、3㎞先まで届きそうな歌声を響かせていくことだろう。

問合せ 渡辺さん
TEL 090・8742・4992


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