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家族の愛に守られ、ステージは世界へ
- 2015/4/3
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ピティナ2014コンペ全国決勝E級金賞受賞 永井 希望 さん
全日本ピアノ指導者協会が主催するピティナ・ピアノコンペティションは、参加者が総勢4万人ともいわれる日本最大規模のピアノのコンクール。毎年5月下旬から各地で予選と本選が行われ、8月下旬に東京で全国決勝大会が催される。38回目となる昨年行われた全国決勝の高校1年生以下の部門で、いすみ市に住む永井希望さん(14)が見事に金賞を受賞した。
希望さんがピアノを始めたのは5歳。生まれて3カ月くらいから小さな音にも反応する希望さんを見て、父方の祖母が音楽を勧めたのがきっかけだった。「月に1時間半のレッスンでしたが、1年でかなり上達し、教えていないのに勝手に和音を弾きながら曲を作っていました。絶対音感がすでに備わり、才能があるようなので、小学6年から本格的に習わせました」と母親の景子さん(48)。とはいえ、希望さんはこれまで小学校や中学校には通ったことがない。不登校や長期欠席という理由ではなく、家庭で親が子どもに勉強を教えるホームスクールという制度を利用してのこと。
「聖書によると子どもの教育は親にゆだねられています。学校に通わすのも教育の一つの選択だとは思いますが、知識を学び友達を作る以上に、神を知り、正しい生き方を教えるのが大事と思っています。長い時間を共に過ごすことで、その子の持つ能力を知り、見合った対応もできます。そしてこの度ピアノを教えてくださる先生の助けもあり、晴らしい賞をいただくことが出来ました」と景子さん。景子さんは韓国籍。日本に住む姉の勧めから21歳で来日し、日本語学校で語学を学び、大学、大学院の国際学部で平和について学んだ。しかし人間の貪欲は限りなく、自ら平和は作れないと感じ神学校で学び、現在、2人の子どもを育てながら教会の牧師もしている。子ども達には自分の行動に責任を持ち、神から頂いている才能で人々に尽くすことができるような優しい人になってもらいたいと話す。
「今は教科書と教科書ガイドで学校の勉強をしています。同居している祖母は日本語を話せませんが、テレビドラマや聖書を読みながら韓国語を学んだので話ができます。学校に行かない不自由は感じていません。たまに3才下の妹をいじめたりしますが、すぐに心が痛み、母に告白します」と希望さん。希望さんは掃除を始めると、きりがないほど根をつめるほうだが、性格は雑だという。コンクール曲はどうしても細部まで弾きこまなければならないので、そのための練習は嫌いだそうだ。しかしピアノを弾くことは好きで、譜読みが早く、新しい曲に取り掛かるのが楽しいと話す。
コンクールではバロック、クラシック、ロマンスタイルのうちから各1曲と近・現代スタイルの1曲、計4曲を演奏する。予選では2曲、本選で残りの2曲。そして決勝では4曲全てを弾かなくてはならない。「課題曲を片っ端から聴いて、面白そうで自分の力になるようなものを選びました。それでバッハやドビュッシー、そして大好きなベートーヴェンとショパンの曲にしました」
希望さんには将来、世界に通用するピアニストになる夢があり、現在、複数の講師にピアノや音楽理論を習っている。それぞれの講師によって曲の解釈、教えるツボが違うので多くの教えを受け、習得し、自分なりの表現をしなくてはならないそうだ。これからもっと深く音楽を学びたいと留学も考えて英語の勉強を始めているというが、留学するかどうかまだ分からないと笑う。
「子どもは成人になるまで親がしっかりサポートしなければならないと考えているので、留学となったら、家族で付いて行くつもりです。でも二十歳を過ぎてしまえば、自分で生きる道を見つけてもらいます」と景子さん。
3月には第一生命ホールでの入賞者記念コンサートでショパンのバラード第一番ト短調Op.23を演奏する。また若手の演奏家を育てるため中村紘子が音楽監督を務める浜松国際ピアノアカデミーに参加予定。5月には紀尾井ホールにおいて師事する講師の発表会がある。
礼拝堂ともなっているピアノの置いてある部屋には、これまで受賞した記念の盾やメダルと共に仲むつまじい家族の写真がたくさん飾られていた。ピアノを聴きたいとお願いしたら、ショパンを一心に弾いてくれた希望さん。今後は作曲やオーケストラと一緒に演奏してみたいと夢は大きい。