夢は世界で通用するプロサーファー

岩見 天獅 くん(いすみ市)

 2016年6月、アメリカで行われたサーフィンのアマチュアコンテスト(NSSA)で見事チャンピオンに輝いたのは、いすみ市在住の岩見天獅くん(11)。NSSAとはアメリカの各地域の予選を勝ち抜いてきた学生が参加できるコンテストで、この試合を制したものが全米のアマチュアトップとなる。そのため昨年、天獅くんは友人と共にアメリカに渡りコンテストに出場し、3位入賞でNSSAの出場権を獲得した。サーフィン関しては何でも自分で調べて行動に移す。アメリカに行くこともコンテストに出場するのも天獅くんの強い希望からで、父親の公平さんはコンテストが湘南辺りで開催されるのだと思い、軽い気持ちで許可したという。
 天獅くんがサーフィンを始めたきっかけは、5歳の誕生日に子ども用のボードをプレゼントにもらったこと。「お父さんがサーフィンをやっていてカッコ良かったから自分もやりたいと思いました。すぐに波に乗れたし、水は怖くありませんでした。最初は遊びでしたが、8歳頃から将来はプロになろうと決めました」と天獅くん。それまでの習い事をすべてやめサーフィン一筋だったが、ある時波の勢いで海に設置してあるテトラポットの隙間に吸いこまれそうになり恐怖を感じた。そこで自分の泳ぎが上手ければ怖さも克服できると考え、水泳教室に通い泳ぎを習った。
 プロになると決めてからブレずに目標に向かって行動する天獅くんだが、特にコーチにはつかず、ほぼ独学。暇さえあればビデオを見ながらイメージトレーニングや、体力をつけるため走ったり、サーフボード上のポーズを作るためにスケートボードに乗るなどの努力をした。しかし当時住んでいたのは埼玉県川口市で海は遠く、波に乗るのは週末と限られていた。天獅くんは一刻も早く海に行きたいと、両親に金曜日の下校時間に車で校門に迎えに来てもらい、そのまま外房の海に向かい2日間はびっしりと海に入って練習を続けた。
 しかし週末だけでは物足りなくなり、とうとう学校の終業式の日、4月からいすみ市に引っ越しをすると放送室から全校に宣言してしまった。「引っ越しするって本当ですか?と先生から連絡があって知りました。子どもが本気で考えているなら仕方がないと2年前、岬町に引っ越しました。私には陸から自分を見ていてくれ。母親には後でチェックしたいのでビデオを撮ってくれと土下座までしていました」と公平さん。
 湘南や伊豆など、サーフィンができる場所は他にもあるが、岬町付近の海は良い波が立つ場所で、オリンピックのサーフィン大会の開催地と決定したほど。引っ越してからは毎日、学校が終わると練習のため海に向かう。波は風向きでコンディションが毎日変わるので、その日入る海を天獅くんが自ら波情報アプリを使い波や風向き、潮の流れを読んで決めている。そして一度海に入ると集中して2時間は戻ってこない天獅くんを陸上から両親が見守る。「冬は寒いし夏は暑いので付き合うのは嫌だったんですが、今ではこれが日常になってしまいました。学校の勉強も心配でしたが、遠征中もしっかり勉強していますし、通信教育も受けているので文句はいえません」と母親の京姫さん。これから試合シーズンになり天獅くんと全国を転々とする生活になるが、今ではそれが当たり前のようになっているという。
 天獅くんの将来の夢は、世界でトップ34人しか参加できない通称CTというチャンピオンシップツアーに出場すること。そして今年の目標はプロサーファーに挑戦すること。その為、今年1月にはハワイに、また3月はオーストラリアに滞在し、4月から5月にかけては、母親と共にプロ試験の1戦目が開催されるインドネシアのバリ島に滞在しプロを目指す。もし12歳までにプロになれば日本サーフィン史上、最年少の記録を塗り替える快挙となる。
「コンテストに出場するのが好きです。大会では緊張はしますが、プレッシャーには強いタイプ。良い波が来て技さえ決まればプロテストに合格できると思っています」と天獅くん。成長に合わせたボードやウェットスーツが必要になってくるが、早くも天獅くんの才能に期待して5社のスポンサーがつき、年に最低5本は必要となるボードは専任のオーストラリアの職人が作っている。2020年開催のオリンピックも視野に入れ、夢に向かって最大限の努力を惜しまない天獅くんを応援したい。

問合せ 岩見公平さん
TEL 0470・64・6105

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