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地域医療を賢く活用し、元気に過ごすためには~千葉ろうさい病院 岡本美孝 前病院長講演会~【市原市】
5月17日㈰、市原市市民会館で開催されたのは、『千葉ろうさい病院 岡本美孝 前病院長講演会』。当講演会は、市原市在住者を中心とした早稲田大学出身者のOB会である『市原稲門会』が主催。会長の井上嘉子さんは、「今は、人生100年時代と言われています。講演では健康寿命の伸ばし方、日常の生活の中でのヒント、地域医療について学べます。健康づくりの一助にして、地域の知識を深めてくれたら嬉しいです」と話した。1時間半の講演に集まった74名の参加者は、7年間にわたって院長を務め、中核医療拠点の指揮を執った岡本さんの話に、熱心に耳を傾けた。
変化する地域の医療体制
現在、千葉大学の名誉教授である岡本さんは、1979年に秋田大学を卒業。ニューヨーク州立大バッファロー校をリサーチフェローとして勤務した後、2002年に千葉大学大学院医学研究院にて耳鼻咽頭科・頭頚部腫瘍学の教授となった。2012年に大学を定年にて退官すると、それまでの経験を生かして千葉ろうさい病院の病院長として尽力した。
「これまでの日本では、現役時代を過ごして定年、老後を過ごすという流れが一般的でした。ただ、IT情報社会への変化もあり、今後はある程度、学び使用しながら生きていく必要があります。さらに、定年は益々伸びているが、現役世代がいつまで続くのかは不明瞭。社会制度や住居、医療に対しての不安は高まっています。いい長寿社会にするにはどうするべきか、みんなの問題として考えていかなければなりません」と、岡本さんは話す。
7年前、台風19号により千葉県が甚大な被害を受けたことは記憶に新しいが、それでも市原市は災害が少ない地域で、現在の住民は26万5千人程。高齢化のスピードも速く、市原市は5年ごとに1万人の人口が減少していくと推定している。比例して、病院を利用する患者の年齢も上がっている。「数年前は、75歳以上の患者の割合は半分以下でしたが、今は半分を超えています。救急の推移を見ても、65歳以上が30%を超えて右肩上がりです。ろうさい病院には市原市だけでなく、長生郡や茂原から来る患者さんもとても多いです。それでも、これは千葉市に比べると高い割合となっています」と、岡本さん。
心配は、災害だけではない。数年前に世界を襲ったコロナウィルスのパンデミック時には、全国の病院が混乱の渦に巻き込まれた。岡本さんは、「ろうさい病院は、ダイヤモンド号の患者を受け入れ、ワクチンも先頭を切って摂取したことでメディアにも多く取り上げられました。コロナウィルスは2023年に5類に分類され、警戒度が下がったものの、すべてが解決したわけではありません」と、警鐘を鳴らす。当時、救命現場に携わる人がかなり不足していたこと、そして市との連携がうまくとれないこと。さらに、災害時に核となる病院がないことなどの問題が露呈したのだ。「病院への敷居が高いのかもしれない」と考えた岡本さんは解決策として、無料の循環バスを出すこと。市民に講演会への積極的な参加を促し、医療への理解を深めてもらうこと。議員ほかとの懇親会を増やし市との連携をスムーズにすること、などを実行した。当該病院の救急外来の医師も21名まで増やし、今では月500件の救急患者を受け入れている(うち半数が入院)。さらに、令和6年4月からスタートしたドクターカーも平日に限って稼働している。これは、救急を受けた医師が車に同乗し、救命率を上げようという試みで、月20件ほどの出動があるとか。ろうさい病院は現在、千葉県の救命救急指定センターの申請中で、年内には指定を受ける予定だ。
地域医療へ益々貢献を試みる病院に対して、患者となる地域住民ができることは何があるのだろうか。「これまで病院に行くと、入院、リハビリ、退院と一つのところで完結する流れができていました。ただ社会の高齢化を受けて、政府が対策をしたことで病院は機能分化を始めています。地域包括ケアといい、治療期、リハビリなどの回復期、長期なら慢性期など、場所を移動しながら地域全体で医療を支えようとしている」と、説明した岡本さんは、「患者の皆様にも、このような体制を理解してもらえるとありがたい」と訴えた。
一人ひとりができる事
日本が超高齢化社会になるにつれて、社会医療保障費は膨らんでいき、現役世代だけでなく高齢者自身でも収入に応じて保険料の負担が増額している。海外と比較して、政府が日本の保険制度を見直す必要があるかもしれないが、岡本さんは、「待っていてもダメ。まずは自分の問題として考えてみてください。各病院の診療所の役割を考えて利用すること。そして、普段の健康管理を何でも相談できる、かかりつけ医をもってください。さらに、自分が将来どうしたいのか。そして、大切にしていることなどを共有する人生会議を、医療スタッフや信頼できる家族と何回も繰り返してみてください」とアドバイス。国民の声を受けて、国の制度も変化する。そして、地域の病院も改善や対応を試みている。だが、まずは自分の健康維持に目を向けることが求められるのだ。「健康寿命とは、どれだけ自立して生きられるかです。2050年には680万世帯が一人暮らしになると言われています。適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠や検診を受けることなどで、健康を守って欲しいです」と、岡本さんは続けた。
健康という身近なテーマに、集まった聴講者も真剣に聞き入った。そして、「デジタルが発展したことで、病院の検索も容易になったものの、普段は口コミなどを参考にしていて、実際にどこがいいのか選ぶ基準が難しい。どうしたらいいですか」、「長寿社会になるにつれて、認知症が増えていると聞くので不安です。今日聞いたことを継続して行うには、どんなことをすればいいですか」、「市原市の介護施設は十分ではないと感じています。今後さらに必要となる場所だと思うが、何か対策はされていくのでしょうか」など、現実に向き合った質問が多く飛び交い、会場は最後まで大盛況だった。