- Home
- シティライフ掲載記事, 市原版
- 長年の絆が生み出す音の心地良さを感じて
長年の絆が生み出す音の心地良さを感じて
- 2018/5/18
- シティライフ掲載記事, 市原版

デュオ『のりしん』
市原市や千葉市を中心に活動するデュオ『のりしん』。ボーカルの伊勢紀子さん(54)とギターの松岡信二さん(56)が結成したのは2015年7月のこと。2人の出会いは36年前に遡る。「私が18歳の時でした。高校生の時にアイドルやロックに夢中になり、将来は演劇や歌手活動で生きていきたいと決めて。劇団を受けたり、ジャズの学校に通ったりしている中で、船橋の音楽スタジオで受付のアルバイトしていたんですが、ちょうど誘われたバンドにいたのが松岡さんでした」と話す、伊勢さん。
当時はロン毛でロック少年だったという松岡さんは、仕事を持ちながらバンドの掛けもちやアーティストのバックを務めながら音楽と共に生きてきた。逆に伊勢さんは宴席での仕事やコーラスの誘いやレコードデビューの話も実現しかけながらも、次第に音楽から離れ25歳の結婚を境に殆どの演奏活動から手を引いたとのこと。「それでも仲間とは連絡を取っていたし、やっぱり歌いたい気持ちはずっとありました」という伊勢さん。
そんな2人に転機が訪れたのは2012年だった。こころの病を発症し、3年ほど闘病生活を続けた伊勢さんは、自宅から外出することもままならないほど落ち込んでしまうことが多かった。「私は音楽から離れたことはなくて、バンド仲間が始めた千葉市内のライブハウスで定期的に演奏していたんですが、そこに伊勢さんを誘ったんです。ちょっとでも外に出てみない?って」と話す松岡さんは、一見逞しい男性だが、彼の書く詩や曲調はとてもロマンティック。優しさ溢れる心が、当時の伊勢さんを救ったのは間違いないだろう。その後、2014年に仲間の還暦祝いライブパーティの話が持ちあがり、松岡さん共々演奏者として参加する事を決心。友達の切り盛りするライブハウスの出演も徐々に増え、翌年からは毎月自分達の枠を持てるようにまでになった。「人前での演奏を意識し、練習を重ねていくにつれ徐々に自信がつき夏のジャズフェスに初参加したんです」と、当時を思い返す。そこからは、「まるで誰かに導かれるように」、出演依頼が舞い込んでくる。
千葉、市原、茂原市のライブハウス他、飲食店やショッピングモール内ホール、2016年には幕張新都心で開催される音楽祭「サマーソニック」の前夜祭で本格的なステージを経験。「音響機材や装飾、舞台裏に貼られた翌日のプロのスケジュール表に大緊張でした!」と、松岡さんは笑う。そして、「昨年の千葉市ベイサイドジャズコンペティションのグランプリ受賞を機に立たせてもらった大ホールも緊張したけど、前夜祭の時はお互いの親に見てもらえて親孝行が出来たね」と続けた。
進化していきたい
2人の演奏可能曲は60曲ほど。ジャズやポップスが主だが、2人が聴衆に求めていることは「聞いている人にリラックスしてもらいたい」ということ。そして、「主体性がないといわれるかもしれないけど、出演するイベントやお店に合わせた曲を演奏したい」と伊勢さんが言うと、「色んな曲を一緒にやってきたからこそ、音楽性が出るのかと。だんだん『のりしんサウンド』が作られているかな」と、松岡さんも続けた。
多くの、そして大きなイベントへの出演を短期間に取得し、順調にステップアップし続ける『のりしん』。だが、結成からもうすぐ丸3年という間、当然だが決して楽しいことばかりではなかった。「介護の甲斐なく亡くなってしまった父、沢山の不安や心配ごと、気持ちの浮き沈みはあります。それでもライブ終了後に良かったと声をかけてくださる方の言葉を聞いて、やっていて良かったと思うし励まされます」と、伊勢さんは語る。
そんな伊勢さんを、松岡さんも「ステージ上で人目を引くような華があるのは、彼女が昔から変わらないところ。これからも、1曲1曲を作りこんで、前に演奏した時よりも進化させていけたら」と続けた。 「昔は歌を上手く歌おうと気負っていた時期もあったけど、今は歌に込めた思いが伝わることだけを願っている」という伊勢さんの声は、とてものびのびとして心地良いものだった。同デュオは出演依頼を受付中。詳細は問合せを。