CITYLIFE 地域情報紙シティライフ 斜面に咲き誇るジャパンブルー 麻綿原のアジサイが花盛り~初日山 妙法生寺~【大多喜町】 2026.06.26 大多喜町筒森の妙法生寺では、天拝園(てんぱいえん)と名付けた境内で約2万株のホンアジサイが見頃を迎えている。昭和26年(1951)に廃寺を再興した先代の住職、蓑輪日受(にちじゅ)さんがアジサイを植えたのがはじまりで、現在は日受さんの長男で現住職の顕寿(けんじゅ)さんが、天拝園の管理を行っている。同寺の最高峰、初日山は標高364.3m。平地と比べ花時が遅く、花は7月下旬まで楽しめる。7月19日㈰には先代を偲び『そば供養』が開かれ、参拝者にそばが振舞われる。 アジサイ一本一本が仏様 妙法生寺は、日蓮聖人が昇る朝日に向かい『南無妙法蓮華経』と初めて題目を唱えた場所として伝わり、その伝説が寺名の由来となっている。鎌倉時代からの古刹ながら、山深い地であったため寺は興亡を繰り返し、明治時代には廃寺になっていた。昭和26年の再興以来、先代住職の日受さんがアジサイを植樹し、今ではあじさい寺として広く知られるようになった。現住職の顕寿さんは、「師匠は、ヒナギク、グラジオラス、ダリア、アジサイと様々な花を植えて、その中でアジサイが一番山に合っていたようです。20年かけて法華経の文字数と同じ6万9384本のアジサイを植えました」と、説明する。 顕寿さんが同寺の住職を引き継いだのは、昭和59年(1984)。南房総では、1990年代からシカ、2000年代からキョンが大繁殖し、深刻な食害が問題となった。同園のアジサイも大きな被害を受け、顕寿さんの代にも新たに1万株を植え付けた。「アジサイの根元から出る新芽を食べられてしまうと、株がだめになる。漁業用の網や金網で防護柵を張りますが、シカやキョンとの追いかけっこです」と、悩ましい。今まで張った柵は全長3㎞に及ぶとのことだ。 毎年9月から翌2月にかけては、剪定の季節。顕寿さんは家族の手を借りつつ、アジサイにハサミを入れていく。残暑は厳しくなる一方だが、始まりを遅らせると2月までにすべて終わらせることができない。また、アジサイの時期以外にも訪れる人の目を楽しませようと、シャクナゲやモミジなどを植え、竹林を整備し、園のあちらこちらに目を配る。広大な敷地の管理をほぼひとりで担っている顕寿さんだが、天拝園で一番好きな季節は「冬」だという。「剪定をし終えた冬のアジサイに可能性を感じる。その中に花が全部入っていると。剪定して残した枝先の葉が、蓮の花に見えることがある。師匠が『このアジサイ一本一本が仏様なんだよ』と言っていたのはこのことかなと感じるのです」 【写真左】蓑輪顕寿住職 散策は万全の準備で シカの繁殖と共にヤマビルも増殖している同地。顕寿さんはそれを逆手に取り、『ギャー恐怖のヤマビル体験コース』と名付けた園路に看板を設置し、来園者に注意を呼び掛けている。テレビ番組『ナニコレ珍百景』では、この看板とコースが『珍百景』に登録された。服装は、山を歩くのにふさわしい長袖・長ズボンがおすすめ。サンダルは避け、ズボンの裾を足首にぴったりとゴムなどで巻き付けると、ヒルの侵入を防げる。ヤマビルも防虫スプレーで対応できる。 散策は、妙法生寺手前の町営駐車場に車を停め、本堂にお参りをし、園内のコースを巡り駐車場に戻ると、階段や坂道を含めおよそ700mの距離。園路については、妙法生寺ホームページにある住職手書きの園内案内図が詳しい。本堂の持仏堂は自由に拝観可能。靴を脱ぎ、正面の階段から中へ。中央には本尊の日蓮聖人坐像が鎮座する。向かって右手には、珍しい釈迦如来像が祀られている。『パワーブッダ』と呼ばれ、お釈迦様と握手やハイタッチができる。堂内のいたる所には顕寿さんが墨で書いた金言が貼られており、一つ一つの言葉をかみしめる時間も貴重に感じる。気さくな顕寿さんと行き会えば、話も弾むだろう。持仏堂裏手の高台には大日天堂があり、日蓮聖人の立像が安置されている。この場所と、車道をはさんだ更に奥の高台からの見晴らしは素晴らしく、房総丘陵の山々を見渡し、日の出を拝むこともできる。この辺りに生息するヒメハルゼミの鳴き声は、環境省『日本の残したい音風景百選』に選定されている。毎年7月第3日曜日開催の『そば供養』は、今年は7月19日の11時~13時。寺の再興を成した先代、日受さんの好物だったそばを大釜で茹で、参拝者に振舞う。 【写真左】 握手のできるお釈迦様『パワーブッダ』 【写真右】 そば供養で説法を説く蓑輪住職(左) 夏山の緑に映える無数のアジサイの花々。顕寿さんは、「リピーターの方にうかがうと、『ここのアジサイを見ていると、なにか心が落ち着く』とおっしゃいます。淡いブルーが癒しになっているのでしょう。この風景がみなさんの心に刻まれると有難い。あの山の中に日蓮さんいわれの寺があると、みなさんに知っていただけたらうれしいです」と、話す。拝観料・入園料は無料。天空のあじさい寺をぜひ訪れてみるのはいかが。) 問合せ:麻綿原初日山妙法生寺 大多喜町筒森1749 Tel.0470・85・0330 HP:https://mamenbara.life.coocan.jp ◇交通案内 ・養老渓谷粟又より約10㎞ 町営駐車場1日500円 ・会所の森親水広場から麻綿原高原の区間一方通行(7/20迄)、普通車のみ可 ・小湊方面林道奥谷線 午後5時から翌朝9時まで夜間通行止め(7/21迄)