祝 国史跡指定 山野貝塚 地味ですが、すごいんです

袖ケ浦市郷土博物館

 1100年間連綿と営まれた縄文人の暮らしを探ることができる、袖ケ浦市飯富にある山野貝塚。平成29年10月13日、国史跡に指定された。袖ケ浦市郷土博物館副館長の西原崇浩さんは「房総半島に現存する大型貝塚の中で最南端に位置します」と胸を張って説明する。
 山野貝塚以南にも大型貝塚は存在したが、宅地開発などで失われ今は見ることはできない。「大きな土地の改変がないため、縄文時代の景色がそのまま残っています」と馬蹄形の貝層が白く写る航空写真の資料を示す。縄文時代後期前葉から晩期中葉の遺跡で、東京湾東岸の中間地点に位置することから、東京湾内湾部と外湾部の貝塚の両方の性格を併せ持っているそうだ。
 同館が開催する特別展『山野貝塚のヒミツを探る』を訪れると、入り口正面にあるジオラマには縄文時代の丸木舟が浮かぶ。バックには山野貝塚北側を流れる境川と本展を案内するイメージキャラクター『シーカ』が描かれている。「縄文人は川を利用して海とムラを往来していました」
 2階の展示室2は縄文時代や貝塚に関する入門編。貝塚は全国に約2400ヵ所あり、全国で最も貝塚が多い千葉県にはその3割近くがある。今回は、根形公民館近くの三ツ作貝塚で発掘された、早稲田大学所蔵の条痕文土器が「70年ぶりに里帰りしました」
 特別展示室に向かう窓から見える鉄塔の下が山野貝塚のある場所。大正時代から知られていたが、昭和48年に鉄塔建設のために本格的な発掘調査が実施されたという。さらに進むと廊下の壁側には山野貝塚から剥ぎ取った貝層と床には写真で発掘の様子が再現されている。
 貝塚には当時の生活事情、文化、自然環境まで膨大な情報が残されている。「縄文人の暮らしを想像してください」。特別展示室の中央には時代順に土器が並ぶ。今から約3800年から2700年前に形成された山野貝塚の土器は後半に登場する。出土した魚は41種。内湾に生息するクロダイ、スズキ、外湾に生息する大型のマダイ、フグなどの骨があり、両方の魚を捕る技術を持っていたとわかる。「他のムラとの交流もありました」。東北や近畿地方の土器、八丈島など南海に生息する貝のアクセサリーなども発見したことから、この地域の拠点集落だったと考えられている。

 貝塚は神聖な場所だった

 出土する貝は時代が古いほど小さい。温暖化によって、房総半島の海水面が上がってきたころは、干潟や川の水と入り混じる汽水域に生息する貝が多く、寒冷化で再び海が後退し、干潟が遠くなると、小さい貝を取らないような規制があったためか、貝は増えて大きくなる。それとともに森の大型の生き物や木の実の採取も増える。貝塚からは祭祀に使われたと思われるものも出てくる。「妊婦を象徴する土偶はほとんど割られて発見されます。祭祀や呪術的な意味があったのでしょう。そばには何度も建て替えられた跡がある柄鏡形住居や墓もあります。貝塚は単なるゴミ捨て場ではなく縄文人がヒト、動物、モノの再生を願った神聖な場所だったのでしょう」。縄文晩期には傾斜地を盛り土し埋め立てたような形跡もある。「その後、地域全体に700年間ぐらい人が住んだ形跡がなくなり、弥生時代に再び人が住みます。それも謎ですね」と西原さんは興味深そうに話した。
 君津市から訪れた男性は「公園でジョギングをしていて特別展を知りました。何千年も前の暮らしを想像するのはおもしろい。発掘ボランティアもしてみたいです」。木更津市から来た夫婦は「古くから袖ケ浦市に人が住んでいたのに驚きました」、蔵波に住む女性は「貴重な遺跡が身近にあったのですね。後世に残してほしいです」と熱心に見学していた。
 国史跡は国の歴史を語るうえで欠くことができない遺跡として文部科学大臣により指定され、半永久的に保護され、国からの補助金で史跡整備や活用の事業が進む。「地道にやってきた調査研究が実りました。華々しい出土品はありませんが、新たに製塩土器や大型住居、祭祀跡などが出てくる可能性もあります。周辺にも貴重な文化財が多く残るので、市の文化の拠点として整備していきたいです」と西原さん。山野貝塚はまだ全体の3%しか発掘されていないという。
 現地は私有地なので立ち入ることはできないが、同博物館から徒歩約20分。足を伸ばして真理場古墳群、飽富神社、飯富寺などを巡れば散策コースにもなる。特別展は6月3日(日)まで 9~17時 入場無料 休館 月曜(祝日開館)・祝日の翌日

問合せ 袖ケ浦市郷土博物館
TEL O436・63・3693

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