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シンプルで機能的、型にはまらない形を追求して
- 2018/11/23
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革作家 平山 篤さん
バックや財布、キーホルダーなどの革製品小物を、ミシンを使わず、すべて手縫いで制作する御宿町在住の平山篤さん(35)。平山さんは神奈川県三浦市生まれ。幼い頃から物を作るのが好きだったことから、物作りを生業にしたいと考えていた。6年前、革に興味を持ち、趣味で作ったのは簡単な財布やカードケースなどの革小物。そして革製品の製作を仕事としてやっていこうと鎌倉に店舗兼アトリエを構えた。「アトリエでは女性がドレスアップした時などに持つ小さなバッグに、紙幣を折らずに入る財布や、革の特性を活かし、持ち手がくるくると丸まるバッグを制作しました」
とはいえ仕事として始める前に専門書を一冊購入したくらいで、全くの独学。革の小物製作だけで生計が成り立つかどうか不安だった。それでも三浦市で一緒に暮らす親の協力もあり、鎌倉のアトリエに入り浸るような生活が続いた。そして徐々に平山さんの作る作品が目にとまるようになり、評判を聞きつけた東京都内のセレクトショップが企画展を催すまでになった。
しかし2年前、アトリエの契約が終了することになり、他に物件を探さなければならなくなった。それでちょうど前年から空き家になっていた母方の御宿町にある実家に引っ越すことにした。平山さんにとっては子どもの頃によく遊びに来ていた場所だったが、一人暮らしは初めて。自分の収入だけで生活しなくてはならなくなった。
「都会に近いと色々なものに気が紛れてしまうことも多かったのですが、ここは夜になると真っ暗で何もありません。家も広く、最初はちょっと怖いくらいでした。そうなると、自分自身と向き合う時間が多くなり、単純に仕事と生活の両立を考えるようになりました。そして目指す生活水準はあるけれど、環境は変わっても自然はあり、そこに人が住んでいるのはどこも同じ。都会じゃなくても生きていける、この仕事だけでやっていけると思えるようになりました」
平山さんの作る作品は左右対称が原則。例えば一般的な二つ折りの財布だと右に小銭、左にカードが入るようになっており、財布以外でもほとんどが右利きの人に合わせて作られているという。平山さんがこだわる左右対称であれば、利き手の違いで使用感が変わることはない。また生産性を考えるとミシンを使ったほうがいいが、すべての工程を手縫いで仕上げる。
「最初からミシンを使うという選択肢はありませんでした。革を裁断し、金具で縫い穴を開け、一本の糸の両端にそれぞれ針をつけ縫っていく。縫うと言うより結ぶという感覚です。一つの作品にするまで時間はかかりますが。糸がほどけず丈夫に仕上がります。また手縫いじゃなければ出来ない構造もあるので、それを活かす作品作りをと心がけています」
使う人に優しい
平山さんは他と同じような物では勝機はないと、「変わった」物作りを目指してはいるが、デザインと機能が両立していなければ納得はしなかった。キーケースが指で押さえるだけで簡単に開くのは、片手に荷物を持っていることを想定してのこと。カードをつまむように取り出せる名刺入れは、乾いた指でも取り出しやすいようにと使い勝手を考えた結果だった。また最初に作った小さな財布も紙幣を折らずに入れられるだけでなく、小銭が取り出しやすく20枚以上も入る実用的な物だ。
作品のブランド名はhirari(平利)。平利の「平」は穏やかで優しく、「利」は生活に役立ち誰でも使えるという意味を込めた。
「見た目はシンプルだけど使いやすく、使う人の生活に活かされ、長く使える小物の定番を作りたいと、同じ作品を作り続けるつもりです。作品の利点を説明して、お客様がなるほどと笑顔になる時が嬉しくて、イベントなどがあれば参加したいし、将来は自分の店も出したいと思っています」
SNSで平山さんの作品を見た主催者からの連絡で、今年8月アメリカ、ニューヨークで開催された日本の職人技を紹介する展示会に出展した。平山さんがデザインに興味を持った頃から憧れていた近代美術館がある都市で、自分の作品がどれほど通用するのか不安だったというが結果は大成功。今後の作品作りのモチベーションの向上にもなったようだ。
現在は通信販売の他、東京、埼玉、群馬、大阪、福岡などのセレクトップや生活雑貨の店で平山さんの作品が扱われているが、予約をすれば平山さんのアトリエで作品を実際に見ることが出来る。詳細は平山さんまで。
問合せ 平山篤さん
TEL 090・7909・2175
contact@hira-ri.jp
https://www.hira-ri.jp