ふるさとビジター館 晩秋に咲く 里山のリンドウ

 草刈りが定期的に行われている里山にリンドウの花が咲いていた。図鑑で見かける直立した姿と異なり、崖から垂れ下がるように生える姿は、市原というより千葉県のリンドウの特徴。
 リンドウ科リンドウ属の多年草リンドウ(竜胆)の花は、長さ5センチぐらいで青紫色の筒状鐘形。茎の先葉腋に付き、晴天の時だけ開く。花冠の先は5裂、裂片の間には副片、内側には茶褐色の斑点がある。無柄の葉は対生で茎を抱き、卵状披針形。
 リンドウ属につる性のツルリンドウという種類がある。県内での分布は限られ、生育が少なく、花の色は白系の淡紫色。市原の植生の多様性か、垂れ下がるリンドウはツルリンドウによく間違われる。
 漢方ではリンドウを『りゅうたん』と呼び、根を乾燥して生薬にする。根を噛むと強い苦味があり、動物のクマの胆嚢を乾燥した熊胆(のうたん)より苦いから、竜の胆として、竜胆(りゅうたん)の名前がついた。葉が細いほど苦味が強いとか。
 リンドウのように丈の低い野草は、草丈が低い状態に保たれていないと目にすることができない。かといって、伸びはじめたリンドウの芽まで刈り払っても駄目。里山を蘇らせる保全の要諦は刈らずに残す野草と刈る野草をしっかり区別すること。リンドウが咲く景色で里山保全の苦労をうかがい知ることができる。
 ときには12月まで見られることもある。立ち止まり、下だけでなく上までゆっくり眺めれば、出合える野草の種類も増える。離れた所は、双眼鏡で眺めるのもよい。市原の自然は豊かなのだから。

ナチュラリストネット/野坂伸一郎

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】第1回プロジェクトチームのメンバー。前列中央は小出市原市長  市原市は2021年5月、内閣府から『SDGs未来都市…
  2.  飛鳥時代から連綿と紡がれてきた日本刺繍の世界。繊維の宝石と呼ばれる絹地に、光沢のある絹糸で一針ひとはり刺して作る刺繍は、繊細で緻密、鮮やか…
  3. 【写真】昨年の慰霊顕彰と生誕祭  4月1日(土)長柄町高山で、同町出身・大田實海軍中将(享年54歳)の慰霊顕彰と生誕祭が開…
  4.  日本百景のひとつ、茂原公園の満開の桜。春爛漫の風景が堪能できる『茂原桜まつり』の期間中、3年ぶりに『茂原公園・桜の山の春の市』が開催されま…
  5.  読者の方々から映画に関するお問合せが多く寄せられましたので、今年度より「懐かしのシネマ」がスタートいたします。洋画・邦画・監督・俳優等、素…
  6.  昨年のゴールデンウイークに友人から「ウメハルシメジが公園に出たよ」と連絡がありました。ウメハルシメジはまだ見たことがないキノコです。さっそ…
  7.  昨年11月、市原市能満に市原歴史博物館がオープンした。これは既存の市原市埋蔵文化調査センターを増改築した施設で、愛称は『I’Museum …
  8.  御十八夜は市原市の中心に位置する米沢の森の標高162・3mの山頂で、晴れた日には東京湾やスカイツリー、北は筑波山、富士山、南アルプスや鹿野…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】第1回プロジェクトチームのメンバー。前列中央は小出市原市長  市原市は2021年5月、内閣府から『SDGs未来都市…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る