自分の判断を信じて風をよみ、海を走る

セーリング世界選手権代表 菅沼 汐音さん

 真夏を感じさせるほど暑さに見舞われた5月の日曜日、市原市在住の菅沼汐音さん(15)は千葉市稲毛区にある稲毛ヨットハーバーでセーリングの練習に励んでいた。現在、私立渋谷教育学園幕張高等学校の1年生である彼女は、父親の保さんの仕事の影響で小学校3年生までミクロネシア連邦ポンペイ島で暮らしていた。クルーザーで近くの無人島へ冒険に出かけたり、海に潜って遊ぶ日々。そんな汐音さんがセーリングを始めたのは帰国後。
「セーリングは、帆を流れる風を使って水上を進む競技で、海に浮く目印で作ったコースを周り着順の合計点を競います。ほとんどが個人戦ですが、団体戦もあります」と説明する。15歳までの子ども向け入門艇であるオプティミスト級では、2014年3月バーレーンで開催されたアジア選手権に日本代表として出場。オリンピックの一人乗り競技で使われている艇種のレーザー級では、2014年8月佐賀県唐津市で開催された世界選手権に同じく日本代表として出場した。
 その後、同年10月長崎市開催の長崎国体のセーリング少年少女シングルハンド級に千葉県代表として出場し、準優勝。今年に入ってからは、5月に佐賀唐津市で開催されたJOCジュニアオリンピックにレーザー4・7級で出場。シリーズ戦5戦中3戦の成績で競う年間ランキングで2位となり、上位3名に与えられる称号として、見事8月にオランダで行われる世界選手権への出場権を獲得。近年目覚ましい成長を遂げる注目の選手なのだ。

「一番難しいのはスタートです。5分前になると旗が揚がるんですけど、毎回状況は異なるので2分前には場所の取り合いです」と話す汐音さんは、綺麗に日焼けした顔で笑いながらセーリング独特の競技を説明。つまり、「風の力で進むセーリングだからこそ、スタート前の5分でやることはたくさんあるんです。風を読み、潮の流れに注目します。他の選手に先に出られてしまうと、目の前の風を使われてしまうので遠回りする必要がある」のだとか。
 風が弱い時、その流れは数センチの距離でも違う。それだけ重要ということだ。反対に、風の強い時は小さい波が立つので海面が濃く見える。流れの強い部分を見つけて乗ればスピードがつくが、速さだけあればいいというわけでもない。「風に対しての判断は人それぞれ。目の前の風に乗らず我慢してさらに先に行けば、もっといい風が吹いていると考える人もいる。経験が大事で、上級者になれば雲を見ることも」と保さんも語る。聞けば聞くほど奥深さを感じるセーリング。
 そんなセーリングから汐音さんが得たものは、なにより『友達』。「昔は、コミュニケーションを取るのが苦手だったんです」と苦笑いする彼女だが、自然な素振りで質問に答える姿からはそんなことを微塵も感じさせない。「セーリングを始めて、遠征に行くようになって友達が増えました。知らない人でも自分から話せるようになったし、今は高校でも個性の強い人が多くて、誰かと関わることや一緒に成し遂げることが本当に楽しいです」と声を高めた。
 なにより『楽しむ』ことを心がけているのは、日常生活だけでなく海上でも同様。「時々重圧を感じることもある」が、どんな大会でもネガティブにはならない。そのために、失敗はできるだけ練習で学ぶ、そしてコーチの言うことは素直にすべて聞き、自分なりの方法を試してから選んでいく、というやり方を貫いている。また、平日は海に出られないため筋力トレーニングは欠かさない。腕立てやスクワット、腹筋や背筋など一連の筋力トレーニングを行うのも、風があると全身を使うスポーツであるセーリングのため。規定の体力テストはユースが設けているランキングにも影響するので、世界選手権出場のためにも力が入る。
「今までは大会に出られて満足していたけれど、これからは結果も残していきたいです。ゆくゆくはオリンピックを目指したいですが、まずは目の前のことから!」としっかりとした意見を述べる彼女が望むのは、「もっとセーリングを知って興味を持ってもらえたら嬉しいです。ゲームをするより仲間と自然を楽しむほうが素敵だよ、と小さい子にも伝えたい」ことだとハキハキと続けた。

問合せ 後援会事務局 
TEL 0436・98・1011

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