さりげない気配りこそが、観客を笑顔にする最大のマジック

マジシャン 内藤 淳也(Piace〈ピース〉) さん

 52枚のトランプの中から好きなカードを1枚選んでサインをする。裏返しにし、カードの山に戻す。マジシャンが指をパチンと鳴らすとそのカードが1番上へ移動。さらに、脇に置いてあった別のトランプの箱からカードを出すと、選んだのと同じカードだけが裏返しになっている。鮮やかな手さばきで瞬時にカードやコインを移動させるのは市内在住のマジシャン、Piaceこと内藤淳也さん(21)だ。観客と至近距離で行うクロースアップマジックを得意とし、市原市、市川市、都内の飲食店やホテルなどで、食事を楽しむ客のテーブルを回ってマジックを披露するテーブルホッピングを主流に活動している。
もとをたどれば、小学生の頃に祖母が安い手品グッズを買ってくれたことが始まり。子ども騙しのような手品だったが、友人や家族が喜んでくれたことが心に残っていた。テレビ番組などの影響で再び興味を持ち始めたのは高校生のとき。手品用のトランプや本を購入しようと都内のマジックグッズ専門店を訪れたところ、ある有名マジシャンに出くわした。彼に教えられ池袋にある『NPO日本クロースアップマジシャンズ協会(JCMA)』に足を運んだのがマジシャンを本気で目指そうと思ったきっかけ。「この偶然の出会いがなければ趣味で終わっていました」と振り返る。同協会はマジックを世界共通の文化と捉え、催事活動や国際交流、若手マジシャンの育成などを行っている団体。主催のコンテストが半年に1回開かれ、1位を獲得したマジシャンは日本一を決めるジャパンカップに出場することができる。さらにそこからは世界大会への道も開けるというマジシャンにとっての登竜門だ。同協会の田代茂会長に師事し、平成25年にJCMA公認のパフォーマーとしての資格を取得した。JCMA主催のプチコンテストでは優勝経験を持つ。昨年1月に韓国で行なわれたマジックサークルに出演し好評を博した他、日本代表に選ばれたマジシャンのアシスタントとして世界大会の舞台に立ったこともある。
 披露する手品は既存のものもあれば、日常生活でヒントを得て自分なりにアレンジしたものも。愛嬌のあるルックスで、一瞬のすきに観客の目を盗む内藤さんだが、巧みな手つきの裏には日々の努力の積み重ねがある。就寝前の3時間、格好よく見えるシャッフルの仕方、コインを下の手の平から上の手の平へ、左の手の平から右の手の平へ飛ばす筋肉トレーニングなどを何度も繰り返し行っている。カードの枚数を指先の感覚だけで当てるのもマジシャンにとって必要な技術。講習会などで自分だけができないとき、テーブルホッピングで「おまえの手品はたいしたことないな」と言われたときは落ち込み、やめたいと思うこともしばしばだ。そんなときに内藤さんを支えているのは家族、恋人、友人や趣味で所属しているサッカークラブチームのメンバー。「心がくじけそうになったときに会って話すとホッとする。マジックとは関係のない周りの人々がいてくれるおかげで続けられている。感謝しています」
インパクトのある手品をすれば人は驚く。だが、内藤さんがまず気を配るのは礼儀やきちんとした服装。テーブルホッピングの際に客のグラスがあいていたら「おかわりをお持ちしましょうか」とさりげなく言葉をかける。「お客さんが見ているのは手品だけではなく、身なり、姿勢、立ち居振る舞いだったりします。お客さんを不快な気持ちにさせないということを常に心がけています」と丁寧な口調で話す。
JCMAの講習会に通い始めた頃、高校の文化祭で教室の隅っこ、机1つの狭いスペースで同級生に手品を披露した。「おまえ、こんなことができたのか」驚いた友人の言葉が胸に響いた。「人が不思議がったり喜んだりしている姿を目にしたときが一番嬉しい」名前のPiaceはPeace(平和)とPiece(一部)を掛け合わせたもの。「世界各地での民族紛争など暗いニュースも多いが、手品を見せることで笑顔(平和)の一部になることができたら」との思いから決めた。
コンテスト時に全国から集まる幅広い年齢層のマジシャンたち。国籍を問わず横のつながりが広がるのもマジシャンになってよかったと思うことのひとつだ。
現在の目標はテレビに出演すること。「パーティーなど集まりの場があれば出張マジック致します。ご用命下さい」謙虚さを持ちつつも自信に満ちた魅力的な笑顔を見せた。

問合せ Piaceさん
E-mail j-magic68@ezweb.ne.jp

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