旧家に伝えられた名品たちに息吹をともす

 2月12日(日)まで、睦沢町立歴史民俗資料館で開催されている特別展『旧家に伝えられた名品』。県内在住の所蔵者から借り受けた展示資料60点は、制作年月も種類も異なるが、「目に見えない糸で作品が繋がっているように思えました。集めた後に作家や作品について調べてみると、制作者同士が旧友だったりするんです。細かい部分にまで目を凝らすと、作品に残された作家の本質を見ることができます。自分の中のお気に入りの一品を見つけていただけると嬉しいです」と話すのは、同館スタッフの山口文さん。
 名品の中には大正時代に生まれ、昭和・平成と活躍した挿絵画家の谷口健雄の『人形(赤いリボン)』や全国の小中学校で200もの校歌を作詞した白鳥省吾が訳した『江南の春』、玉前神社境内にある彫刻も制作している長坂友孝の『福禄寿像』など様々なものがある。来館者のほとんどが長い時間をかけてゆっくりと名品に魅入るようで、「石川響のガラスの器に入った桃の絵が好きです」、「非日常の世界を感じて良かったです。千葉県にゆかりのある作品って、とてもたくさんあるんですね」との声が上がっているという。
 「たとえば福禄寿像ひとつにしても面白いんです。まず頭巾を被っていることも珍しいんですが、少し頭巾が光っているでしょう。これは、恐らく代々の所有者が福を願って頭を撫でていたのではないでしょうか」と山口さんは想像を膨らませる。
 他にも、展示室正面のガラスケース内いっぱいに広げられているのは、『離合山水図屏風』。江戸時代後期、大網生まれの斎藤巻石が描いた屏風で、6曲のうち2扇ずつが3対になっている。一部分を見ても全体を見ても1つの画面として見られる絵には、山や家、海の上に小さく人間が描かれている。近づくほど奥行きがあるように見える不思議さが持ち味で、絵の中の人になった気分も楽しむことができる。
 「ここに集めた物は歴代の当主が床の間に飾り、大切に守ってきたものです。みなさんのご自宅にあるかもしれない古い名品を、後世に伝えるためにも今一度大事にしてもらいたいというメッセージとともに開催しました」と想いを語る館長の久野一郎さん。山口さんと一緒に、酒井三良の『担櫓帰漁図』に描かれた男が、漁へ行く途中か帰っている途中かを問いかけ合う2人の姿は、まさに絵で遊びを楽しんでいるかのようだ。
 同じ時代、違う場所で生きた作品たちが時を経て1つの空間に並べられる。隣同士に飾られた彼らが、私達の見えないところで過去を懐かしんでいるように見えてしまうのは、考え過ぎだろうか。

問合せ 睦沢町立歴史民俗資料館
TEL 0475・44・0290

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