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養老渓谷に見る地形の歴史
- 2016/3/11
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先人が築いた土木構造物と長い地球の歴史の中で自然が作り上げた壮大な地形。市原市内、周辺で見られる3カ所を『土木学会』会員、市原市在住の堀添なつ子さんに案内してもらった。
まずは養老渓谷葛藤地区の川廻し跡。温泉街にかかる赤い『観音橋』辺りから東側の台地を囲む形で蛇行していた養老川の流路を、丘の西側、同橋付近から直線状に短絡し、曲流部分を水田に作り変えた。江戸時代のことだ。川底だった土地は肥沃で軟らかく米作りに適していたといえる。川廻し跡は養老川流域で随所に見られるが、この葛藤地区は現在も水田が存在している貴重な土木遺産だ。養老渓谷温泉街が右手に見下ろせる北側の坂道からは、その風景が一望できる。
次に向かったのは、地球磁場逆転期の地層が見られる田淵。田淵会館の駐車場で下車、案内表示通りに進む。川べりに降り立ち切り立った地層を見上げると、地層中ほどより少し下に、くっきりとした線がついている。これは長野県の古御岳火山が約77万年前に噴火したときの火山灰が堆積した白尾凝灰岩(びゃくびぎょうかいがん)層。その上下についている赤い印が、N極とS極が逆転している層。その上の黄色は中間、さらにその上の緑は現在と同じ磁場である地層。同場所はイタリアの2カ所と並んで、ユネスコの機関である国際地質科学連合が研究対象とする国際模式地としての候補にあがっている。今夏に南アフリカで開かれる万国地質学会議で決まる。
続いて古敷谷川の甌穴(おうけつ)を見学に。81号線を北上し、里見小の手前で右折、同川を目指して東へ進み、川にぶつかる辺りの三叉路で南下。『里山 ホタルの里』から約1㎞ほどで右手に現れる細い道に入りトンネルを抜けた所で駐車。川べりへ降りていく。洗濯板のように段々になった川底を見ながら浅いところを選んで進んでいくと、甌穴発見。川の長さ約50mの間に大小約20個ほどの穴があいており、大きいもので直径約2m。流れの力で川底にできたくぼみに石が入り込み、回転しながら川底を削ることにより形成された。養老川筋にはこういった甌穴が随所に見られる。地球規模で見ると、房総山地は比較的新しい時代に短期間で隆起した。ゆえに岩盤もまだ軟らかく、こういった現象が見られるのだという。
数百万年前からの地質の歴史を陸上で見られる場所はそう多くない。養老地域ならではの地形の歴史、まだまだ観察すべき場所は大いにある。