おいしいお茶を召し上がれ 千葉産のお茶を栽培から製造・販売まで~ 有限会社 河野製茶工場~【大網白里市】

【写真】3代目社長・河野宏明さん

 

 大網白里市大網の『河野製茶工場』では、現在6ヘクタールの茶園でお茶を栽培している。工場で加工されるのは銘茶『房総みどり(ふさみどり)』。『ちばエコ農産物』の認証を受けたお茶は、県内全域の道の駅や農産物直売所などで販売され、業務用として多くの観光ホテルや民宿に納められている。5月初旬には一番茶が摘み取られ、今年もおいしい新茶ができあがった。

3代続くお茶農家

茶刈り

 河野製茶工場は昭和32年の創業で、現社長の河野宏明さんは3代目。お茶づくりは宏明さんの祖父の美佐夫さんの代からだ。戦後、米作の傍らお茶の製造機械を購入し、委託加工を始めた。宏明さんは、「昔の農家は生け垣や庭にお茶の木が植えてある家が多くありました。その茶葉を20㎏、30㎏と、少しずつ持ってきてもらったものを加工していました」と説明する。その後、土地を購入したり、農地を茶畑にしたりして耕作面積を増やし、宏明さんの父・宏康さんの代に『自園自製』できるようになった。

 もともと亜熱帯性の作物のお茶は寒さに弱く、生産地として北に位置する千葉では寒さや霜の害の対策が欠かせない。また、同じお茶の品種でも南の産地のものと比べると葉が厚くなり、味は濃く、コクが強い。「寒さ対策では、旬の時期が遅い品種を選ぶなど、収穫期を遅らせる工夫をしています。味に関しては、当園のお茶のうまみを堪能できるように焙煎にこだわっています」と、宏明さん。「祖父や父が『お茶でも野菜でも、できるところで味や香りが違う。無理して静岡のお茶を真似るのではなく、土地に合わせたものを作る』と言っていたことを心に刻んでお茶づくりを続けています」

安心・安全に留意して

できあがった荒茶

 茶畑では、5月初旬に新茶の摘み取りと製造が始まる。それに先んじて、2月には肥料を施し、堆肥による土壌改良、3月には、秋に伸びた枝を整える『整枝(せいし)』作業が行われる。6月下旬から7月にかけては二番茶の摘み取り・製造、10月くらいまで、追肥、手作業での除草作業が繰り返される。

 摘み取った茶葉は直ちに工場へと運ばれる。茶葉は摘まれた後、しおれて酵素の活性が始まるので、緑茶の製造では『蒸す』ことによって熱を加え酵素活性を止める。(因みに発酵茶である紅茶や烏龍茶は、酵素活性を促すために茶葉を1~2日そのままねかせる。)蒸した後乾燥し、次に粗揉(そじゅう)・中揉(なかもみ)・揉念(じゅうねん)・精揉(せいじゅう)と4段階に分け茶葉を揉みながら熱風に当て、徐々に水分を減らしていく。揉むことで葉の繊維をやわらかくし、中に成分を閉じ込めるのだ。葉はくるくると丸まり、よじれた針状の形となる。これらを更に乾燥させると、製品になる前の段階の『荒茶』ができあがる。生の茶葉から荒茶になるまでの工程がおよそ3~4時間。収穫量の多い日には深夜まで機械が動き続ける。荒茶は大小さまざまな状態のものが混ざり合ったもので、そこから商品に合わせて振るい分けや異物除去が行われ、最後に焙煎して仕上げられる。

 河野製茶のお茶は、『ちばエコ農産物』に認証されて15年程。『ちばエコ農産物』とは、環境保全と食の安心・安全に配慮した千葉県独自の農産物認証制度だ。『化学肥料や化学合成農薬の使用量は千葉県が定めた標準の半分以下』『栽培作業の審査や現地確認』などの規定が課されている。「お茶は病気や害虫に悩まされる作物なので、『環境にやさしい農業』に取り組んですぐは苦労しました。使わずに我慢できる農薬は使わなかったり、病気や害虫の出やすい時期に畑の管理方法で工夫するなどして、今ではほとんど農薬を使用せず栽培しています」

 飲料が多様化した最近ではコーヒーや紅茶など香りが強いものが好まれる傾向にあり、全国的に緑茶の消費・生産量は減っている。また栽培面でも、雨が多く気温が高いという気候変化や、資材の高騰などにも対応しなければならない。「たくさんの課題がありますが、ここでできる味を守りながら、消費者の好みに合わせた商品開発にも取り組んでいきたい」と宏明さんは熱心に語る。同社では煎茶に加えて緑茶品種で作った和紅茶や、お湯でも水でもおいしいスティックタイプの粉末緑茶、長柄町の飲料メーカー『ジャパンフーズ株式会社』と提携した房総みどりのペットボトルなども販売している。「急須を持っていない世帯が増えるなど日本人の生活スタイルは変わっても、お茶は生活に密着した飲み物です。生活の様々な場面に合わせて、ぜひお茶を楽しんでいただきたいと思います」。新茶の季節、めずらしい千葉のお茶を味わってみるのはいかが。

 

問合せ:河野製茶工場 
Tel.0475・72・0191

 

『この記事のご感想をお聞かせください』


男性女性


10代20代30代40代50代60代以上


とてもよかったよかったどちらでもないよくなかったとてもよくなかった


毎週読んでいる月に2回ほど読んでいる月に1回ほど読んでいるあまり読んでいない

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】スパリゾートハワイアンズ・ウォーターパーク ●千葉県立美術館開館50周年記念特別展「浅井忠、あちこちに行く~むすばれる人、つながる時…
  2. 【写真】五井小の歴史をたどるスライドショーの冒頭、紹介する子どもたち        昨年と今年は、創立150周年を迎える小学校が多数ある。1…
  3.  冬の使者と呼ばれるハクチョウ。シベリアなどから北海道を経由し、冬鳥として日本へ広く渡って来る。近年、地球温暖化の影響で、繁殖期と越冬期が暖…
  4. 【写真】坂下忠弘  来春3月2日(日)、市原市市民会館・小ホールで開催される『いちはら春の祭典コンサート2025』。市原市…
  5. 【写真】千葉県立中央博物館・御巫さん  11月24日(日)まで、千葉県立中央博物館で開催されている『二口善雄 植物画展』。…
  6. 【写真】川口千里(左)、エリック・ミヤシロ  日本を代表するトランペット奏者、エリック・ミヤシロを迎え、いま最も注目を集め…
  7. 【写真】うたと語り「今、この町でこの歌を」  毎年、夏に開催される『市原平和フェスティバル』。平和への祈りとメッセージが込…
  8.  今回は「映画音楽」特集の第1回。良い映画では必ず、音楽・主題歌が感動を与えてくれます。テレビCMでも使われる名曲もあり、何処かで聞いたこと…
  9.  3つの窓が並ぶカウンターはケヤキの一枚板。絵本コーナーは小上がりになっていて、壁際の本棚の横には籐の椅子。マンガが並ぶ2階の屋根裏へは細長…
  10. 【写真】布施知子《二重折りのヘリックス》2018  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『かみがつくる宇宙―ミクロとマク…

ピックアップ記事

  1. 【写真】五井小の歴史をたどるスライドショーの冒頭、紹介する子どもたち        昨年と今年は、創立150周年を迎える小学校が多数ある。1…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る