第14回地域再生大賞優秀賞受賞 チバニアンの魅力を地元から発信~NPO法人田淵チバニアンズ~【市原市】

【写真】チバニアンガイドの皆さん

 

 2020年1月、市原市田淵の地磁気逆転層を含む地層『千葉セクション』がGSSP(地質年代の境目を世界で一番よく観察できる地層の断面)に認定され、77万4千年前から12万9千年前までの時代が、ラテン語で『千葉の時代』を意味する『チバニアン』と命名された。『NPO法人田淵チバニアンズ』は、2019年12月にオープンした『チバニアンビジターセンター』の委託管理を市から請け負い、草刈りなどの環境整備、チバニアンガイドの運営など幅広く活動している。今年2月には、千葉日報など地方新聞47紙とNHK、共同通信が、地域活性化の取組みを応援する『第14回地域再生大賞~つながる、多様性が拓(ひら)く』にて優秀賞に輝いた。

チバニアンガイド活躍中!

ガイドツアーの様子

 養老川の河床から千葉セクションの露頭(地層が直接見える部分)を見上げると、のっぺりとした特徴のない崖の上部に一本の地層の筋が見える。これがGSSPに認定された白尾(びゃくび)火山灰層で、77万4千年前の古期御嶽山の巨大噴火によってもたらされたものだ。そこから上がチバニアン、下がそれより古いカラブリアンの時代の地層となる。2022年5月に、GSSPの証として『ゴールデンスパイク』が設置された。白尾火山灰層の上1・1mのあたりに、目には見えないが、現在に至る最後の地磁気逆転である『松山-ブルン逆転境界』がある。この境界を中心に約2千年かけて、S極が南半球から北半球へ移動した。露頭から足元の養老川の河床に目を移すと、そこは78万年前の海底に生活していた深海生物の化石の宝庫だ。貝や、生痕化石と呼ばれる生物の這った跡などがいたる所に見られる。

ゴールデンスパイク。背景の横の線が白尾火山灰層

 露頭には多くの見学客が訪れる。「ずっと興味があったので、ゴルフの帰りに」「グランピングで近くに泊まったので」「釣りに行く途中に看板が気になって」と、訪れる人の行程は様々。見学客をサポートするのがチバニアンガイドだ。日時を選べる『チバニアンガイドツアー』と、休日の『定時ガイド』は60分コースで有料、その他に露頭で説明したり、質問に答えたりする『露頭ガイド』がある。ガイド歴3年の鈴木せい子さんは「その方の興味に合わせて、一番感動できることを見つけて説明するようにしています。この地層がすばらしいと感じていただくことに意味がある。来た時と帰る時の目の輝きが違うとうれしくなります」とテンポよく話す。ガイドの説明を受けた人は「チバニアンという名前だけで、地磁気逆転とは知らなかった。詳しい知識に触れられてよかった」「テレビで観るだけでなく、その場に来てみてよかった。難しいこともわかるように説明していただきました」と笑顔で話していた。

ガイド6期生を募集

地層「千葉セクション」の露頭全面

 田淵チバニアンズの活動の中核を担うチバニアンガイドは、養成講座も充実している。令和5年度の5期生養成講座では、4月のガイダンスに始まり、古地磁気学、生痕化石学、田淵地区の歴史や救急救命など、フィールドワークも含む計13回の講座と、バス研修が行われた。講師陣は千葉セクションGSSP提案チーム代表の茨城大学・岡田誠教授をはじめ豪華な顔ぶれ。バス研修では茨城県つくば市の地質標本館と、水戸市の茨城大学岡田教授の研究室を訪問した。

 2月時点で、ガイドは30代から90代の33名。これに研修中の5期生11名が順次加わる。『チバニアンガイド部』部長の石井あゆみさんは「チバニアンガイドは研究の最前線にいても専門家ではないので、疑問に思ったり、お客様から質問されて分からなかったりしたことをその都度先生方に教えていただいています。新しく得た知識や情報は、月に1度の定例会で全員が共有することを徹底しています」と説明。「ガイドの皆さんはみんな楽しそう。説明して感謝されることが喜びです。高齢者も多いので、ガイドが1人1人の生きがいになるといいと思っています」と続けた。隈健吾さんの設計事務所が設計を担当することでも話題となった新施設『チバニアンガイダンス施設』(仮称)は2027年開館予定。石井さんは「より人が集まる場となるので、地元の農産物の直売所やみんながくつろげるカフェなど、地域振興にも努めたい。ホームぺージも充実させ、発信力をより高めていきたい」と熱心に語る。

新ガイダンス施設外観予想図

 露頭見学の際は、ビジターセンターで説明展示を見てからがおすすめ。河床の観察のために長靴を履くと良い。降雨後の川の増水時は見学不可。当日の川の情報はホームページで確認できる。現在、チバニアンガイドの6期生を募集している。ガイドはボランティア。講座受講料は無料。「ボランティア精神と知識欲のある方は、ぜひお仲間に!」とのこと。詳しくはホームぺージか、問合せを。

 

問合せ:チバニアンビジターセンター 

Tel.0436・96・2755(FAXも同)

開館:10月~3月・9時~16時

   4月~9月・9時~17時

休館:木曜、年末年始

https://www.tabuchi-chibanians.com/

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…
  2. 【写真】教室の講師と子どもたち  JR浜野駅前と五井駅前でダンススタジオを経営する堀切徳彦さんは、ダンス仲間にはNALUの…
  3.  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『レイクサイドスペシフィック!─夏休みの美術館観察』が7月20日(土)に開幕する。同館は1995年竣…
  4. 【写真】長沼結子さん(中央)と信啓さん(右) 『ちょうなん西小カフェ』は、長生郡長南町の100年以上続いた小学校の廃校をリ…
  5.  沢沿いを歩いていたら、枯れ木にイヌセンボンタケがびっしりと出ていました。傘の大きさは1センチほどの小さなキノコです。イヌと名の付くものは人…
  6. 『道の駅グリーンファーム館山』は、館山市が掲げる地域振興策『食のまちづくり』の拠点施設として今年2月にオープン。温暖な気候と豊かな自然に恵…
  7.  睦沢町在住の風景写真家・清野彰さん写真展『自然の彩り&アートの世界』が、7月16日(火)~31日(水)、つるまい美術館(市原市鶴舞)にて開…
  8.  子育て中の悩みは尽きないものですが、漠然と考えている悩みでも、種類別にしてみると頭の整理ができて、少し楽になるかもしれません。まずは、悩み…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る