自然素材でつくる独創的な世界
- 2014/4/18
- 市原版
海、山、山野草などの自然が大好き。そんな八嶋とき子さん(79)(市原市在住)の作品は貝殻や木の実などの自然素材でつくる様々な『空想花』。サクラガイからウニ、ホラガイ、ヘビガイまで種々の貝殻を形や大きさによって、重ねて花びらに、並べて葉脈を表現、また花を生けるボトル部分の装飾に使うこともある。食べたメロンやカボチャの種は絵の具で着色し、何十個もの花びらへと形を変える。花芯に顔を覗かせているのはカラマツの小さな松かさ。他にも身近にあるドングリやヒノキの実、クルミの殻など80種類以上もの自然素材をふんだんに使用している。着色せずに天然の色をそのまま生かす場合もある。中でも色とりどりのヒオウギガイはとても美しい。
「砂浜を歩き、貝殻を拾うことが幸せでした」貝拾いを始めたのは昭和40年頃から。ものを作るためではなかった。北海道、沖縄県、神奈川県の葉山町からグアムのココス島まで、亡くなったご主人と毎年海に行くたびに貝殻を拾い集めた。千葉県内では富津市や館山市に行くことが多かったという。「拾い集めたもので何か作れないかな」何となくそう思ったのが作品を作り出したきっかけ。多くの数が必要となるので「潮の流れに乗って漂着した貝殻を一生懸命に拾って歩きました」と振り返る。流木やサンゴの屑、藻など、一見ゴミにしか見えないようなものも一緒に集め、作品のパーツとして生命を吹き込む。
平成9年にはその独創的な手工芸法から八嶋流萬形華として特許を取得、家元となった。『萬形華』は知人が命名してくれたもので『様々なもので形づくられた華』という意味だそう。平成4年にJR姉ケ崎駅の市民ギャラリーで約30点の『空想花』を展示、平成19、21年には市原市老人クラブ連合会作品展で市長賞を受賞。作品は全て写真に納め、出展した作品には「捨ててしまえば只の種/手を掛ければこんなにカワイイ花に/解説がなければ誰も梅干の種とは思はないでしょう」といったコメントと材料名を添えて大切にアルバムにしまってある。八嶋さんの生み出す独自の世界には無限の美しさが広がる。また新たな作品に期待したい。(礒川)