シャガ 日陰に咲く虹

 これからの季節、人家近くの雑木林の林縁や道端などの湿った木立の日陰で、可憐で輝くように咲くシャガを見ることができます。暗いところで見るとパッと明るい感じがします。名前も知らずにはじめて見た時は、繊細なフリル状の花弁、白、オレンジ、青紫の鮮やかな色合いに思わず目を引かれました。
 シャガは、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブなどと同じアヤメ科。林内などに群生することが多い常緑の多年草。花期は4月から5月、花は朝開いて夕方にはしぼむ。葉は光沢のある平べったいシャープな剣形をしています。学名はアイリスジャポニカ。アイリスはギリシャ語で虹を意味します。つまり「日本の虹」です。名前からして日本を代表するようなとても美しい名ですが、原産地は中国で、古い時代に日本に渡来した帰化植物と言われています。
 シャガは、結実しないため種子繁殖しません。それは細胞内の染色体が3倍体であるためです。種子繁殖する植物は、通常、2倍体の偶数倍数体で、減数分裂をして正常な生殖細胞を作ることができますが、3倍体は減数分裂がうまくできず、生殖細胞が正常にできないため種子ができません。その代りに根茎を伸ばし、その先に芽を作って繁殖しています。このため日本のシャガは、遺伝子的に均一であるかもしれないと言われています。
 ほぼ全国に分布するシャガは、種子繁殖できないことから、古い時代から何らかの方法で人の手によって分布が広がったと考えられています。どんな人がどんな思いでその場所に植えたのか。悠久の時間の中で人とのかかわり合いを感じる植物です。

ナチュラリストネット/時田 良洋

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