職人の気質を貫くことで味がでる

伝統工芸士 最首 實さん

 いすみ市大原在住の最首實さん(78)は、千葉県指定伝統工芸・建具組子の作り手として現在も作品を作り続けている。組子とは釘を使わずに木を組み立てる技法で、建具や欄間の格子などを構成する。
 建具店の長男として旧大原町に生まれた最首さんは、中学2年生の進路を定める時点で建具屋として生きていくことを決意していた。「親がやっていたので自然にあとを継ぐ環境にいました。とはいえ、親も内心やらせたいと思っていたみたいですが」と話す最首さん。3月1日から大原駅近くにある北土舎で開催されていた『最首實建具組子展』で、自身が制作した組子コースターを眺めながら、ひとつずつ過去を紡いでいく。「修業期間5年のうち、2年間は作業をさせてもらえなかった。見て覚えろ、というのが職人の教えだった」そうで、内心は『俺にもやらせろ!』と意気込みながら修業を積み、結果4年で仕事を覚えることができた。その後、都内の建具店に就業し多くを学び、25歳の時に最首建具店に戻ってきた。「親に教わったイイ仕事は残し、東京で視野を広くできた」と話す最首さん、職人気質の父親の教えは『人より速く、うまいものを作れ。お金はもらうものではなく、取るものだ』だったそうで、「職人には執着心が必要。ご飯の時間だからと言ってすぐ休憩するのではなく、考えがまとまるまで粘ることが大事」と続ける。
 現在は、家の構造から和室や床の間が大幅に減少している。そのため、繊細な技術に目を奪われるほどの建具組子とはいえ、高額なこともあり人々からは遠ざかりがちだ。だが、最首さんの組子は一味違う。組子コースターやサイコロ、知恵の輪のように組み合わせるパズルなど、初めて目にするものは多い。知恵の輪パズルは大人も子どもも楽しめ、脳の体操にもなる。『建具組子展』で行われた組子コースター作りの体験に訪れた一家。対象年齢より低い子どもが来た時にも、暇をもてあまさないように四角い木を渡してあげる。サイコロの目を書くように促し、どんな年齢であっても木で楽しめるような心づかいを忘れない。目で楽しむ、触って楽しむ。これが組子の最大の魅力なのかもしれない。
「今は建具店を息子に引き継ぎ、私は畑仕事に勤しんでいますよ。草むしりしたり、ね」と笑うが、作品への探究心は続いている。現役時代から『出来ないというのは職人の恥。まずはやってみる』という強い意志を持っていたので、図面が書けなくても制作に励んだ。「昔の職人は教えずに物だけ残したんです」という通り、どうすればうまくできるのかと考える力が自然と身についたのだろう。だからこそ、制作するのは『綺麗』なものばかりではない。最近一番嬉しかったのは、「組子展の最中に、外国人の方が売り物ではない飾りをとても気に入ってくれたこと」だとか。それは最首さんが『こうしたらどうなるかな』という好奇心から作った飾りで、目的をもった『形』ではない組子。それでも、「売り物でもなく、ただ置いておいただけなのに興味を持ってくれた。それが何かと聞かれても自分でわからない。それでも品物を認めてくれたようで幸せでした」と嬉しそうに語った。
 40歳の時に建具制作一級技能士資格を取得し、同年に千葉県技能検定金賞を受賞。63歳で千葉県伝統的工芸品に指定され、生粋の職人として生きてきた。そんな最首さんが危惧するのは、大事な物の観点をどうとらえるかということ。物が大量生産され、手が込んでいるからと重宝されなくなった。「手を抜くことは田舎でも浸透し、明日壊れてもいいから安くしてといわれることもあった」そう。加えて、「畳のへりを踏まないこと、障子が天気でしわになることなど知らない若者もいる。大学を出ても、自分たちが当たり前の知識として持っていたことを知らないと驚いてしまう」と話す。核家族が進んでいるのは現代の社会現象というものの、実際は老若男女が共に過ごし、知識を分け与えていくのが理想なのだろう。(松丸)

問合せ 北土舎 松村さん
TEL 090・6658・4898

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1.  山武郡横芝光町で戦前から自家製のぶどうでワインを作り続けてきた『齊藤ぶどう園』では、新たな後継者である齊藤雅子さんが日々奮闘しながら、…
  2.  先日から、各ニュースで報道されていた『5段階の警戒レベルを用いた避難情報』。国が平成30年7月の西日本豪雨の被害を踏まえ改訂したもので…
  3.  5月2日(木)、市原湖畔美術館で開催されたのは『房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020 キックオフイベント』。総合ディレクタ…
  4.  5月12日(日)、ゼットエー武道場相撲場にて市原市民体育大会相撲競技が、市原市相撲協会(藤田明男会長)主管で開催された。当日は小中学校…
  5.  4月27日(土)、有秋公民館主催で行われた『フラワーアレンジ』には7名の男女が集まった。5月12日(日)の母の日を控えていたこともあり…
  6.  市原市在住の大水優香(おおみずゆか)さんは昨年5月から今年3月にかけて、国家プログラムの1つ『日本語パートナーズ派遣事業』によりタイの…
  7.  朝起きてから夜寝るまで、私たちの暮らしは守られています。世界各地からニュースとして入ってくる戦争や内乱、飢餓など、国全体を巻き込むよう…
  8.  現在、茂原市立美術館・郷土資料館では新たな『茂原市史』を編纂しており、歴史に関わる様々な情報を募集している。「茂原市は、茂原町、鶴枝村…
  9.  平成29年に県指定文化財として登録された椎津城跡は、足利氏・武田氏・里見氏・北条氏らが争奪をくり返した中世の城郭で、房総の戦国史におい…
  10.  アジアを代表する美の祭典『ミセスアジア』への第一歩となる『ミセスジャパン』の地区予選大会が、5月19日、東金市の最福寺において開催され…

ピックアップ記事

  1.  山武郡横芝光町で戦前から自家製のぶどうでワインを作り続けてきた『齊藤ぶどう園』では、新たな後継者である齊藤雅子さんが日々奮闘しながら、…

イベント情報まとめ

  1. ◆サークル ショートテニス三和 (月)13~16時 三和コミュニティ 会費:半年5,000円 見学、体験大歓迎 貸しラケットあり 菊池 …

スタッフブログ

ページ上部へ戻る