港町灯した文化遺産 山里 吾郎

 船橋大神宮は船橋市の中心部に位置する。正式には意富比(おおひ)神社と称し、天照大神を祀った太陽信仰に起源する。沿革によればその歴史は平安中期にさかのぼり、中核都市・船橋の中でも最古最大の神社として知られる。正月も多くの初詣で客でにぎわったことだろう▼小欄でもたびたび登場させたが、長男夫婦が同市に居を構えたことで、孫の祝い事など何回となく同宮を訪れた。そのたびに『なかなか由緒ある…』と感じていたが、昨年11月末の七五三参りで新たな発見をした▼拝殿の横の小高い丘に独特のたたずまいで立つ古建築。境内の説明板によると県有形文化財の「灯明台」とある。江戸時代に船橋沿岸を航行する船舶が目印としていた常夜灯が起源だという▼慶応4(1868)年の戊辰戦争でいったんは社殿とともに焼失したが、再建を望む漁業関係者ら地元有志の手によって明治13(1880)年に「灯明台」として生まれ変わった。その後、明治28年までの15年間、政府公認の民設灯台として港町・船橋の海を照らしてきた▼高さ12メートルの3階建て。丘の標高を加えると最上階の灯室は約40メートルの高さ。和洋折衷の“擬洋風建築”で、1、2階は和室だが、灯室は西洋式灯台を意識した6角形。樹間にそびえ立つ雄姿は必見の価値がある▼船橋市も昭和30年代の東京湾埋め立ての歴史とともに発展してきた。現在は人口62万人を数える県下第2位の中核都市だ。しかしそのルーツは間違いなく内湾の豊かな資源に支えられた漁業のまち。大都市の中心部に位置する大神宮の「灯明台」は、漁で賑わう港町の歴史を今に伝えている。

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