市原が生んだ日本画家「根本雪蓬」の企画展

『房総郷土美術館』にて開催中

 明治11年、市原郡鶴舞町(現・市原市)で生まれた根本雪蓬は、明治末期から昭和初期にかけて活躍した日本画家。父である日本画家、根本樵谷から筆さばきを学び、18歳で花鳥画の大家・荒木寛畝(洋画の技法を加味した写実的花鳥画を得意とする)に師事。四季の自然を愛し、優しく親しみの感じられる花鳥画を生涯描き続けた。
 その根本雪蓬の作品37点を展示した企画展が10月13日より鴨川市の『房総郷土美術館』において開催されている。(12月31日まで)
 ちなみに、根本樵谷の生家は市原市大久保に現存。これまで市原や県立美術館において根本雪蓬の作品が数点紹介されたことはあるが、今回のような企画展は初めて。
 「雪蓬の作品は、高い技術で線描きされた日本画。当館ではどれもガラスケースなしでそのまま展示するスタイルなので、生のまま見る贅沢を楽しんでいただければと思っています」と、『房総郷土美術館』の黒川武雄館主(67)は語る。
 同館は黒川さんが平成23年11月に開設した私設美術館で、春と秋、年2回の企画展を実施している。JR外房線・安房天津駅から市バスで20分程走った清澄山系の自然の中に位置。付近には日蓮上人ゆかりの古刹『清澄寺』や『不動滝』があり、自然と文化をあわせて探勝できる。
 八街市出身の黒川さん。民間企業に10年間勤務した後、通信教育で教員免許を取得し、28歳から柏市の小学校教諭(図工の専科)として教鞭をとった。教員時代、油絵をはじめとする自らの創作活動の一方で、千葉県の作家にこだわった美術品の収集を始め、「作品の数がだんだん増えてくると、集めるだけでなくだんだん夢が膨らんで」、定年後の美術館開設に向け準備をスタートさせた。
 「来館する方に静かな環境でゆったりと作品を鑑賞していただきたいとの思いで、この地を選びました。もともと山の中が好きで、退職後は山で絵を描いて過ごしたいと考えていましたし」
 363㎡の杉林を伐採した土地に誕生した美術館は、木造平屋建て、床面積100㎡、展示壁面53m。建物の基礎部分は業者に依頼したものの、床や壁・棚等の内装、外装は黒川さんの手による。特に目をひくのは、伐採した杉を活用し丸太を一面に敷き詰めて作った床。伐採した杉だけでは足らず他からも調達、狭い隙間に割った竹を埋め込んでフラットにしたこの床は、自然の中にひっそり佇む美術館をさらに風情溢れる雰囲気にさせている。
 そんな館内に並ぶ根本雪蓬の作品は黒川さんが35年かけて収集したものだ。
 「美術の世界は、新しい試みをした人がもてはやされるという風潮があります。例えば、明治時代に『朦朧体』という新しい技法を生み出した横山大観などは高い評価を得、彼の作品はどれも横山大観作という名前だけで価値が出ました。そしてそれとは逆に、昔からの伝統的な技法を貫いた作家は、評価を受けることなく一般には忘れられてしまう傾向にあるのです。でも、名前があまり知られていなくとも驚くほど高い技術を持つ作家は少なくない。根本雪蓬もそのひとりです。是非、その素晴らしさを実際の目でご覧になり間近に感じてほしいと思います」
 確かに展示作品をみれば、雪蓬が得意とした孔雀の絵は本物と見紛うほど細緻を極めているし、雪蓬代表作の一つ「芦雁図」は温かい。
 「著名な作家が描いたというだけの大味な絵より、一般に知れ渡っていない作家の素晴らしい絵を見る方がずっと価値があると、私は思う」
 黒川さんは、所蔵作品(千葉県ゆかりの日本画、洋画、版画家の作品、千葉県の風景を描いた絵画他)について、こう続ける。
 「もとより一介の小学校教師が生活を切り詰め、予算的に限りのある状態で収集したものですが、感性を研ぎ澄まし、どれも眼と足を使って集めたもの。それら作品の内容は一級であると自負しています。『房総郷土美術館』を通じ、郷土の美術作品の良さを広めていくとともに、優れた作家が埋もれてしまうことのないよう微力ながら情報発信していきたいですね」
 あくまで自然で、冷暖房の設備がないため、『房総郷土美術館』の開館は3月中旬~6月上旬、10月中旬~12月の金土日のみ(10時~16時)。3か月ずつの企画展示の他、黒川さんの絵画作品を展示することも。
 企画展の入館料は300円(高校生以下無料)。自作の作品展示の際は入館無料となっている。

問合せ 房総郷土美術館
TEL 0470・94・0333

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