雑木林に浮き上がるヤマザクラ

 野生のサクラが咲き始めると、雑木林にこんもりした樹形が浮き上がる。何本か一望できる所では白から茶褐色のようなものまで色合いが多彩。その多くは花と葉が同時に展開するヤマザクラ(山桜)だ。
 バラ科サクラ属の落葉高木で高さ10~15メートル。葉腋から散房状に2~5個の花は、直径3センチぐらいの5弁。長さ1センチぐらいの柄がある。つぼみの時は淡紅色で、開いたときは白く先端に少し淡紅が残る。数10本ある雄しべの花糸は白から淡紅、紅色と徐々に変わる。葉の色も新芽は赤、茶、黄、緑と変異が多く、広がるにしたがって緑に変わる。数日経って見直すと、花と葉の色の移り変わりが楽しめる。6月頃、黒く熟すサクランボは大きさ8ミリぐらいで食用には向かない。
 サクラはキクと並び日本の国花として国民に愛されている。今、桜の名所といえばソメイヨシノとカワヅザクラが主流。古くは桜といえばヤマザクラを指し、万葉集で詠われた桜はヤマザクラ。緻密な木肌は加工性に優れ、「真桜」「本桜」といって建築、家具、器具に使われる。カバやミズメを用いた「サクラ材」や外国産の「チェリー材」とは明確に区別される。樹皮は工芸、細工、花は桜茶、葉は桜餅と今でも生活に役立っている。
 市原ではマメザクラ(豆桜)、オオシマザクラ(大島桜)、カスミザクラ(霞桜)という種類も見られる。数が少なく、近くに寄らなければ見分け難い。国府が置かれた時代も咲いていたであろうヤマザクラが、今も普通に見られるのは市原の自然が豊かな証。古い歴史とともにいつまでも大切に残していきたい。
(ナチュラリストネット/野坂伸一郎)

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