【山武市】昔話を引き継いでいくことは未来の子ども達への使命

 3月9日(土)、山武市成東文化会館のぎくプラザで開催された講演会『子どもたちに昔話を』。講師は絵本専門士の中澤由梨子さん。講演では多くの絵本や昔話の紹介だけでなく、実際の絵本の原画が飾られ、中澤さんによる読み語りも行われた。「昔話と普通のお話、そして伝説の違いは知っていますか?伝説は場所や名前など特定されている由来話。普通のお話は作家一人の想像で生まれた創作のお話です。昔話は人類が口承で伝えてきたお話で、時間も場所も名前も不特定で語り口に特徴があります。はじまりとおわりの言葉がはっきりしているけれど、その間は嘘っこの話であり、読者の想像力に任せる自由度が高いんです」と、中澤さんは説明する。
 定年まで出版社に勤務し編集者として多くの絵本を世の中に輩出してきた中澤さんは、筑波大学名誉教授の小澤俊夫さんが立ちあげた『昔ばなし大学』に15年前に出会った。昔話には基本的に著作権がなく、出版社や作家の意向次第で話の道筋を変えることが可能。それ故に子どもにとって残酷だから、仲良くする大切さを知るべきという理由で、ストーリーが大きく変化しているものも多いそうだ。たとえば、一度は耳にしたことがあるだろう『三匹の子ブタ』。

 オオカミは3匹のうち2匹の子ブタを食べてしまうのが本来のストーリーだが、中にはオオカミと子ブタが仲良くなってしまうものもある。実際、来場者約30人のうち、本来の流れで記憶している人は僅か。「オニや魔物が出てくる話でも子ども達は善人な主人公の方に心が動くので、特にそれを問題視する必要はないと、小澤さんは教えてくれました。昔話には生きて行く上で必要な教えや自然が発する声も多く含まれているので、昔からの姿をそのまま伝えるべきなのです」と、中澤さんは説く。綺麗な物だけを見るのではなく、自然の摂理や人には悪の心が芽生えることもあるのだと学んでこそ、まっすぐな心が育つのかもしれない。そして、それを子どもの頃からゆっくりと身につけることが大事なのだという。
 だが、昔話が色んな方向性で語り継がれていることは悪いことばかりではない。「岡山県が一つの発祥とされる『ももたろう』ですが、語り手によって少しずつ違ったりして、岡山県内だけでも集めると50種にはなるとか。色々読み比べてみても面白いですよ」と中澤さんがいうと、その多さに参加者からは驚きの声が上がる。また、月刊の絵本は毎月100冊のペースで出版されているそうで、内容も充実。対象となる年齢によって必要な知識や感受性を育てるために作られた絵本の中には、イチゴの絵を指でこすると本物のイチゴの香りがしてくるものまで。「月刊絵本は、季節を感じてもらうことを大切にしています。今は両親が忙しく、子ども達が保育園で生活習慣やコミュニケーションを身につけていくことは珍しくないため、絵本はとても役立ちます。大人が読んでも楽しいですよ」と、笑顔で話す。
 参加者たちは、中澤さんがゆっくりとした口調で穏やかに話す『にんじん だいこん ごぼう』や『やまなしとり』を静聴。そして、絵本の原画が披露されると、参加者たちは首を伸ばしながら見つめるほど興味津々。参加者からは、「原話の方言がきつくて読むことが難しい時の苦労を教えてください」、「現代の作家が作っている話が昔話として扱われていくことはあり得ますか」、「絵本を自分で描いた時には、どうすれば出版社の人に見てもらえますか」など多くの質問が飛んでいた。

親子で共有してみて

 今回の講演会を主催した『読み語りボランティア そら』のメンバーは12名。活動歴は12年におよび、地域の幼稚園や保育園、小学校などで読み聞かせを行っている。活動自体は単体で出張する形がメインだが、年に1度大人のためのお話会も開催中だ。
 代表の椎名早苗さんは、「子どもの本離れが進む現代、本で楽しむことを知ってもらいたいです。首が座った時から読める本もあります。どういう形でもいいんです。お母さんが無理してたくさんの本を入手する必要はありません。同じ本を何度でも繰り返し読んであげて、時間を共有することが大切かと思います」と話す。簡単に調べられるインターネットや面白い内容のテレビに時間を費やすことは多いが、誰かに昔話を読んでもらうという楽しさを大人になった今、改めて思い出してみてはいかが。同会では、一緒に活動できるメンバーを募集中。詳細は問合せを。


問合せ:読み語りボランティアそら
TEL.090・6957・8791

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