フィギュア原形師の仕事とチェーンソーカービング

フィギュア原形師の仕事とチェーンソーカービング
ハマハヤオ(濱勇夫)さん

大網白里市在住のハマハヤオさん(56)は九十九里浜がお気に入りの散歩コース。東京から移り住んで25年。フィギュア原形師として日本でいち早く活躍した人物で約30年間作品を生みだし続けてきた。「出身の熊本県天草から東京へ出てきたのは1975年。当時は画家を志し、芸大の油絵コースに進学しようとして上京。だが、3浪したものの、その間絵は1枚も描かず、画家は憧れであって絶対になりたいわけではないと気づいた。写真に興味を持ち写真屋で1年、人形を造ろうとマネキン人形会社で働いたりと、フリーターのような生活を送った」と話すハマさんは、「そんな時、好きで集めていたブリキ玩具の骨董店店主に怪獣を作れるか聞かれた。ブリキが集まらなくなってきた時代で、店オリジナルの商品を作ろうとしていたらしい。それがフィギュア制作の始まりです」と続ける。
作業部屋でもある自宅2階の1室は、今まで制作してきたソフトビニール製フィギュアがずらりと並べられている。「当時、ソフトビニール製の玩具と言えばキューピーであり、他には素朴に単純化された形のヒーローや怪獣だけ。本物そっくりの細かいディテールまで再現した怪獣模型は、ソフトビニールという素材の可能性を広げることになった。フィギュアと聞くとおまけについてくるフィギュアを想像する方もいるかもしれないが、私のはオタクと呼ばれるマニアックな人のための商品で30センチほどあり一般のお店には置いていない」という。
ハマさんが最初に作ったのは1950年アメリカ映画に登場する怪獣メタルナミュータントで、リアルな造形はアメリカで一気に評判になった。その後は、フランケンシュタイン、ドラキュラ、バットマン、ジョーカー、エイリアン、プレデターなどを制作。日本物では、ウルトラマンとその怪獣達、仮面ライダー、ゴジラ。アトム、怪物くんなどのアニメキャラクター。他にもスティーブ・マックイーン、マリリン・モンロー、インディー・ジョーンズ、野球選手のイチローまでと手がけた世界は広い。
「かつてはフィギュアのモデルとなる資料も少なく案外気楽に作れた」というが、DVDなどの登場で映像が鮮明になるにつれて細かい部分までの緻密さも要求されるようになってきた。「マニアックなお客さんのためにも、作品は彼らの要求に応える鮮明さが必要。昔は年3、4個作っていたが、今は1、2個のペースになっている」という。
 そんなハマさんは木一吉(きいちきち)というペンネームでチェーンソーカービングでも活躍している。チェーンソーカービングは木を切るチェーンソーを用いて丸太を彫刻するアートで、作品の中には今にも走り出しそうなほどリアルな大型犬や、森の木陰を歩いていそうな小熊、木に止まったふくろうや、空を見上げる少女など独特なものが多い。「フィギュア原形師という仕事は、部屋にこもってとても細かい作業を続ける。野外で豪快に木を削り、1日で作品が完成するチェーンソーカービングの爽快感はとてもいい気分転換になってはまった。今では受注でペットをそっくりに彫ったり、店頭の看板制作なども請け負っている。
チェーンソーカービングの大会では最高が2位、3位も数回受賞したが優勝は未経験。一度は優勝したい」とハマさんは笑顔で話し、木製犬ゴードンを撫でた。「原形師としてはスタートからすぐに評価されて順風満帆だったといえるけれど、細かすぎる作業や長すぎる制作期間にストレスを抱えることもある」といい、「チェーンソーの世界もまだまだ認知度が低いと感じる。もっと人々に知ってもらい、自身は今までにないものを作っていきたい。フィギュア原形師とチェーンソー、どちらも大好きな『造る』作業。細かいことは老眼で辛くなっていくが、マニアの人を唸らせる物を作るためフィギュア原形師としてやれるところまで頑張りたい。チェーンソーカービングでも夢があり、ログハウスを建てて童話の世界や動物たちを作って、あちこちに飾れるようなキャンプ場を作りたい。どなたか一緒にやりませんか。協力者募集中です」と続けて笑顔を見せた。

問合せ ハマさん
TEL 0475・77・2952
http://ameblo.jp/kiitikiti

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