数年後の作品の表情を想像しながら作る~工房 蔓gali 村越達也さん~【茂原市】

 茂原市谷本の住宅街で、工房・蔓gali(ツルガリ)を構える村越達也さんは、山葡萄(ぶどう)の籠バッグや財布を制作している。もとは旅行関係の企業に約20年勤め、その後はオーダーメイドの靴やペルシャ絨毯など、職人が丹精込めて作った商品を取り扱う仕事をしていた。「山葡萄の製品に出会ったのは8年前。デパートの職人展で、たくさんの人が並んでいたのを見て驚いたのが最初です」と話す。

 当時は、自分でも販売したいと、卸してくれる作家を当たったという。しかし、どこも他店にまわすほど数がないと断られ、まったく見つからなかった。「そのうち知人の家具職人が、籠バッグの作り方を私に教えてくれました。一度作ってみようと思い、今度は材料の蔓の皮を探しましたが、これも良質なものが売っていない。行き詰まったとき、北海道で蔓を採取している方が、一緒に山に入るなら分けてあげる、と言ってくれたんです。すぐに北海道に飛んで、それから毎年行くようになりました」

山林での蔓の切り出し

 山葡萄の蔓を取るのは、6月下旬~7月上旬のわずか2~3週間ほど。良い状態の皮を採るためには、蔓が一気に成長し『脱皮』状態になるこの時期に剥かなければならない。まずは道のない山林の奥に分け入り、太くて長い蔓を探し、高い枝から切り落とす作業が必要だ。「雨が多い時期ですので、足場も悪くて滑りますし、蔓も濡れて非常に重いんです。山奥から車のある道まで運び出すのも重労働。工房名の『蔓gali』も、知人が『いつ蔓狩りに行くの?』と聞いてきた時に、これは使えると思ってつけました」と話す村越さん。切り出した蔓は丁寧に剥き、乾燥後、毎年100キロにもなる皮を茂原に持ってくる。これを1年以上寝かせて自然乾燥させ、細く長いヒゴに加工して編む。最初は、趣味として自分好みに作っていたが、4~5年前から販売を依頼されるようになり、本業になったそうだ。

沖縄の帯を編み込んだ籠バッグほか

 村越さんの山葡萄の籠バッグは非常に軽い。材料の皮をできるだけ薄く削っているためだ。さらに微妙な曲がりに沿って細く切り出されたヒゴは、隙間なくキッチリ編みあげるのがとても難しい。「ところが、作り上げるとこれがなかなか面白い。曲がりも自然に豊かな表情になって、皮の色味の違いも、時間が経つと艶を帯びた飴色になっていく。もともと山葡萄の作品は丈夫で100年もつと言われています。時間をかけてまろやかに仕上がる、熟成の世界なんです。数年後にどんな感じになるだろうと、考えながら作っていくのが楽しいですね」。

 作品は、見本を基準に、サイズや形をオーダーで受ける。内張の布も、村越さんが柿渋やクルミで染めた自然の風合いだ。沖縄の伝統工芸の細帯を一緒に編み込んだり、内張の布をカラフルに変えたりと、デザインも編み方も色々ある。完成には2~3カ月待ちという。「ご本人にとって使い勝手の良い1点物を作って、直接喜びの声が聞けるのも、作り手のやりがいですね」と村越さん。出展するイベントは次の通り。ぜひ実物を手に取ってみては。

 

●出展イベント
・暮らしと工藝展:9/17(土)~25(日) 大谷家具製作所(長南町)
・くらしずく 10/9(日)10(祝) 九十九里の杜(菅原工芸硝子工房)
・アートクラフトin市原 11/12(土)13(日) 上総更級公園

 

問合せ:工房 蔓gali Tel.0475・36・5463

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