世界を自転車で駆け抜け、五感で味わう

木村 雄志さん

 千葉市緑区在住の木村雄志さん(33)は2013年9月から2015年2月まで523日間かけて、妻の彩さんと一緒に自転車で世界を旅した。南米のペルーからスタート、アルゼンチン、ヨーロッパに渡ってからスペインやトルコ。中東のイランから中央アジアを通りインドへ駆け抜けた。「走行した国は20カ国。自分たちの生きる地球をこの目で見ることが目的だったので、今でも映像として忘れられません。世界一美しい林道といわれる南米パタゴニアのアウストラル街道やインドヒマラヤのレー・マナリ・ロードを走れたのは嬉しかったです。タジキスタンにパミール高原というところがあるのですが、標高は約5千mと宇宙が近いので、より空の青さが強かったのも衝撃的でした」と、木村さんは回想する。
 自転車での世界旅行へ出発したのは29歳の時。木村さんが、仕事を退職してまで成し遂げたかった挑戦は何だったのだろうか。「きっかけは、2007年に行ったユーラシア大陸の自転車横断旅行。自分に課した目標を達成できず不完全燃焼だったんです。この時の旅で出会った人々が楽しそうに話す世界の素晴らしさが印象に残り、30代になる前に、もう一度大きく踏み出したかったのかも」という木村さんは、東金市出身。
 県立幕張総合高校を卒業後、都内の大学文学部に進学して音楽学を専攻した。ルネサンス時代の音楽に興味があり、高校から大学までは合唱部に所属していたとか。シーカヤックを含めたパドルスポーツ、合唱や写真と趣味も幅広く、好奇心も旺盛だ。2007年に自転車旅行をした際には1年間休学をして、半年間アルバイトで資金を貯めたあとに実行するなど計画性と行動力も兼ね備えている。
 だが、実際に半年間かけて上海からパリまで横断した時は「孤独。自分との闘い」だったとか。野宿をすることは当たり前、熱中症やお腹を壊すことも珍しくない。砂漠は50度と灼熱の中、自転車でただ走行した。帰国後、いくつかの企業に勤務するものの、自転車旅行の夢を諦めきれず、当時大学時代から交際していた彩さんと自転車世界旅行に行くことを決めた。 「妻の母親は、やはり心配しました。安心してもらうために旅の行程について企画書を作ったり、病気や怪我のリスクに対する対策を伝えたりしましたね。国境を越えるのにVISAや入域許可証が必要だったりするので、書類の準備も幾分苦労しました」と、今ではそれも貴重な思い出だ。
 「やらないで後悔するより、やって後悔しよう」、そんな想いでスタートした2人での自転車世界旅行は、大満足だった。「タジキスタンでは浄水器で川の水を1日2回濾過して水を作りました。痩せた大地のため野菜が全く売っていなくて、標高が高く沸点は低いので100度に達しないお湯で茹でた食感の悪いパスタを毎日食べたことも。2人で喧嘩することもあったけれど、色んな国で見たもの触れたことを共有できたこと、極限の生活を共に体験できたことは一生の思い出です」と語る木村さん。

己の限界を越えろ

 2015年に帰国後も、しばらくは実家のある東金市で生活していたが2年前に千葉市緑区へ転居。そして木村さんは株式会社そとあそびに就職した。この会社は国内最大級のアウトドア・レジャー専門の予約サイトを運営しており、木村さんは新規営業の責任者としてチームをまとめつつ北海道から沖縄までのアウトドアツアー会社を直接取材する日々を送っている。3年ほどの勤続で取材した会社は190社を超える。「現地では、安全面に問題がないか調査するだけでなく、ツアーの魅力をユーザーとプロ目線の両面から見極めます。
取材先の会社とも会って話すことで、信頼関係を築けるのもやりがいを感じる一つですね」と、木村さん。世界の景色を見ることで、日本にも海外に負けないくらい魅力的なフィールドがあると実感した。自転車世界旅行を実行して、夢は願い続ければ叶うのだと信じられるようになった。 「会社の紹介するアウトドアツアーはまだ国内だけなんですけど、将来的に海外にも発信していけるように頑張りたいです。また、人生には様々な生き方があること、年齢や性別に関わらず自由に人生を楽しめることを、将来を担う子ども達に私の経験を含めて語る機会が持てたら嬉しいですね」と抱負を語る木村さんは、現在2歳半の男児のパパだ。「子どもが大きくなったら、いつか家族3人で自転車旅行をしたいです」と、最後に父親の顔も覗かせた。

問合せ 木村さん
kim.mscc@gmail.com
http://www.ninin-yonrin.comm

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