祝! 33年ぶりのご開帳~秘仏の鉈彫像が伝える引田の歴史~
- 2013/1/18
- 市原版
33年に1度の開帳にあたる市原市引田の蓮蔵院(真言宗豊山派)では、県指定有形文化財『木造聖観世音菩薩立像』が昨年11月24日(土)、25日(日)に公開され、秘仏を見ようと県内外から訪れた多くの参拝客が長い列をつくった。
木造聖観世音菩薩立像は、105センチの小像で一本のカヤの木から造られ、全体に丸ノミ痕を残した鉈彫りと呼ばれる手法で仕上げられており、平安時代後期に製作されたもので、県内でも3例を数えるのみで市内では唯一の作品。全国の中でも、蓮蔵院像は優美なポーズと繊細なノミ痕が印象的な鉈彫像の代表作と言われ、2006年には、東京国立博物館で開催された『一木彫展』に出展された。
蓮蔵院御開帳実行委員会では、かつて昔に行われた導師・練り踊り行列の再現と地域の歴史に関する講演を行い、住民に地域の伝統文化や文化財への関心をより一層深める機会になればと県・市教育委員会や市原市観光協会の後援を受け実施された。
初日は、あいにくの雨が降っており、9時からスタート予定の導師・練り踊り行列は雨のため20分順延され、引田自治会館前では、参加者が空模様を気にしながら出番を待っていた。
練り踊りは、33年前にも踊られたもので『ジェンジェン踊り』とも言われ、3歩前に歩き、1歩下がる。練り踊りに参加する木島幸子さんは「踊りは昔のビデオを見ながら数か月かけて練習をしました。紺色の着物は33年前のもの。以前参加され、今回踊られる方もいらっしゃいます」と話した。
周辺に掛け声と共に錫杖、鉦、横笛の音が響き始めた。ほら貝を吹きながら行列を先導するのは、実行委員長の白鳥義胤さん。行列には導師、住職、色鮮やかな衣装に身を包んだ稚児、赤を基調とされた花笠と扇子を手に踊る『練り踊り保存会』、心地よい横笛の音色を響かせる『今富愛宕囃子保存会』など総勢78名が参加し、引田自治会館近くから観音堂前まで約50分かけて練り歩いた。道路わきには多くの見物客が集まり、カメラやビデオを抱えてしきりに撮影をしていた。
練り行列が終了すると、御開帳法要式典が1時間かけて行われた。庭儀(入仏供養塔開眼)から始まり、導師式衆入堂着座、法楽(奠供、表白、経、本尊宝号)、来賓祝辞・紹介、祝電披露と続いた。
謝辞であいさつに立った同院責任役員の立野和夫さんは「檀家一同、これからも信仰の象徴として、また美術の文化財として守り続けていきたいです」と新たなる決意を語った。乾杯の音頭後は、一般ご開帳となり、大勢の人々がご利益にあやかろうと順番まちの長い列ができた。記念にと携帯やカメラで撮影している人が多くいた。八幡宿から来た斉藤君子さんは「ひび割れとかもなくきれいに保存されているので、檀家さんたちがずっと守り続けていて素晴らしいです」と話した。
午後には、本堂で『市原市ふるさと文化研究会』事務局長の青柳至彦さんが講演を行い、開始時には会場内は立ち見をするまでとなった。青柳さんは、次々とスクリーンに映しだされた古地図等を使い、引田川流域の文化の流れや引田村名主の立野良道などについて語った。また、本堂に飾られている奉納句額は、横151センチ縦47センチの板に俳句が彫られており、俳句がはじまって間もないころのもので市原市最古のものとの説明に参拝客は、現物に目を向けていた。最後は住職から本堂の仏像についての秘話を聞き終演。
実行委員長の白鳥さんは「文化財を守る責任と新たなる文化財の課題を地域の歴史的な背景を通して次世代に継承し、これからも保護管理に努めて行きたいです」と語った。