房総往来1

房総往来1
山里吾郎

春は淡く、夏は深く、秋は濃く、冬は浅く。日本の四季は味わい深く変化していく。6月から7月、春から夏の境目となる梅雨の時期は、四季の色を変えさせる演出家とでもいえるだろうか▼春に芽吹いた山や田畑の淡い緑にいっぱいの水を注ぎ込み、やがて深緑の季節を描き出す。人間にとっては鬱陶しい季節も自然にとってはかけがえのない重要な役割を果たしている▼そんな思いで改めて田んぼを見渡すと水を湛えた四角い升にすっと伸び始めた稲の緑の何と美しいことか。まさしく日本の原風景ここにあり、といった感がする▼TPPをめぐる論議から日本の米作を危ぶむ声が強まっている。その一方で農業人口の高齢化から耕作放棄されたまま荒地となった田んぼも広がる一方だ。構造改善で大規模農業を進めない限り、日本農業の原型である米作は守れない、とする論議もうなずける▼ただ日本の米作りは収穫量ばかりでなく「いかに美味いコメ」を作るかに先人たちの心血が注がれてきた。そうした原点を大事にしていかないと安い輸入米に対抗する手段を自ら放棄してしまう結果になりかねない▼全国有数の米作り県である千葉県のなかでも市原市は市町村別で5位の収穫量を誇る。もちろん味の良さも県内トップクラスだ。水田の緑が日一日と鮮やかさを増してきた養老渓谷を訪ねながら田園風景の大切さに改めて思い至った。

 遠山あき先生をはじめ多彩な「シティライフ」の執筆陣に加えてもらえることになった。当面はコラムを、と思い「房総往来」なる表題をつけさせてもらった。なるべく歩きながら感じたことを書くつもりだが、時に県外や国外など脱路したら容赦願いたい。ほのぼの感が出せればなどと勝手なことを思っている。◆山里吾郎プロフィール/団塊世代第1期生。日大新聞学科卒。日刊紙記者、社会部、報道部、支局勤務を経て、政経部長、論説委員。

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