南市原で国内外のアーティストが開催に向けて全力投球

中房総国際芸術祭
いちはらアート×ミックス まであと13日

 3月21日(祝)から5月11日(日)までの52日間、開催される『中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス』。大雪により、制作工程に遅れが出たり、作品の一部が壊れてしまったりと大変厳しい状況の中で、会期に間に合うよう、頑張っている皆さんを取材した。
 まずは、旧月出小学校を会場にした『月出工舎』へ。この会場のディレクション(方向付け・作家のセレクトと指導)をした美術家の岩間賢さんは、「コンセプトは創ることと生きること。5つのプログラム、遊・学・匠・食・風を自分も含め8組のアーティストが担当している。いずれも、その素材や制作工程でエコロジーに徹し、また極力、地元産のものを使うように心がけている。月出工舎は、芸術祭が終わっても継続的に活動を展開していきたいと考えている。ここを中心に生産から加工まで循環する景色が生まれるようにしたい。各アーティストはデザインに長けているので、地元企業と新しい商品づくりも。すでに商品化したものあるし、現在進行中のものもある。また、アーティストネットワークをつくるので、アートセンターの役割も今後担っていくことになると思う。こうした取り組みが、他の地域のモデルケースになれば」と語る。
 この日は、以前紹介したプールに布の作品を展示する染色家の岡博美さんと、今回初めて紹介するパフォーマンスやインスタレーション(※)作品を手がける田中奈緒子さんが、ドイツ人アーティストと一緒に制作中。田中さんはドイツ在住でベルリンを拠点にヨーロッパ各国のフェスティバルで公演をしている。今回の展示作品について、田中さんは「影を使った作品です。私自身、15年ドイツに暮らし、日本に帰って来ると、自分が置いてきたもの、日本人が置き去りにしてきたものを感じる。これを今、生きている人がどう感じているかという、目に見えないものを表現し視覚化して、異空間を演出します」と話す。また、田中さんの公演『光を投げる女』は白鳥公民館で、4月19日(土)14時30分・16時、4月20日(日)11時・14時の4回行われる。公演時間は約30分プラストークあり。田中さんが自分にそっくりの人形とランプだけで観客を誘う想像上の旅。是非、体験してみては。(※現代アートにおける表現手法・ジャンルのひとつ。室内や屋外にオブジェや装置を置き、作家の意向に沿って空間を構成し変化させ、場所や空間全体を作品として体験させるアート)
「会期中、この会場は1日楽しめる場。朝食の提供から、ワークショップの開催、外遊びもできる。作家もいるし工房も開く。作品を見て終わりでなく、ここは来場者が主役。何かやりたいことがあったら、言ってもらえたら対応したい。学校では体験できない、ある意味レベルの高い学校を目指したい」と岩間さん。
 白鳥公民館では、以前紹介した舞踏団トンデ空静さんがリハーサルの音合わせ中。レトロな雰囲気いっぱいの館内に、様々な楽器の音が響く。ちなみにバンド編成は、サックス、ドラム、ベース、トランペット、ギター、フルート兼ボーカル。これに舞台ではゲストの『切腹ピストルズ』の和太鼓、三味線、篠笛、鉦などの和楽器が加わり、更に地元の踊り手『石神なの花会』、『炭焼音頭の会』、『石神子供会・日和会』が出演して、3月28日(金)から31日(月)までの4日間(15時30分開演)ジャズとパンクな和楽器と村の踊りの舞踏公演『よほろ~養老舞踏バラエティショウ!!』を開催する。
 主宰の松原東洋さんは、「白鳥公民館が過去と未来を思い出す、未来を思い出すというのは変だと思われるかな。垣間見せる摩訶不思議な世界になります。私たちの舞台を見終わった人たちが、この地の山や川にまつわる歴史などに興味を持って見直してもらえたら嬉しい。公演終了後は、4月5日(土)、6日(日)、13日(日)(11~15時の間で3回を予定)に石神羽雄神社参道前(上総大久保駅)で『なの花わきたち祭』を開催します。菜の花畑の中の野外ライブ(入場料はなく投げ銭制)。3年前に開催された『アート漫遊いちはら』で出会った地元の皆さんとのご縁で、ここまでやってこられた。最初の印象はつかみどころのない土地で、題材にする昔の物語も曖昧だなと。ただ、踊りや唄がとても盛んで、そうした芸能を伝承する人たちが、とても魅力的だった。生きていく中で大変なことがあったとしても、それをことごとく面白い話しにしてしまう。単純に明るいというより、奥ゆかしい明るさと忍耐強さ。そこには、へこたれない反骨心を感じた。そんな地元の皆さんと笑いながら創りあげた舞台です。アート×ミックス終了後も、このご縁を大切におつき合いをさせていただきたいと考えています」と語る。
 他の団員も、「電車に乗るのに遅れそうになったら、コンビニのおばちゃんが、ダンナさんに言って駅まで送ってくれた」、「踊りを教えてくれる人たちは、いつも優しく接してくれる」と地域の人たちの温かい心に触れ、感激しているよう。

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