夏鳥たち

遠山あき

 夏鳥たちが次々と帰ってきた。留め鳥もいるが渡り鳥の一番手はツバメ。ツバメはスマートで紳士だ。飛び方からしてかっこいいし、第一夫婦仲のよいのが好ましい。雀は愛らしい。チョンチョンと跳ねて歩くところもかわいい。カラスは憎たらしい。私が畑にいると「アホウアホウ」と馬鹿にする。時にはスイカなどつついて食べてしまう。真っ黒で醜いし。
 フクロウは寂しがりやだ。闇夜に友を求めて啼く。でも子どものころは怖かった。ウグイスは美声な歌い手だ。しかし唄は一つしか知らない。カワセミは素早い。コバルト色のつぶてが高速で飛ぶようだ。アッと見る間に飛び去る。カワセミを追うカメラマンが黒いカプセルをかぶって徹夜でカメラを構えるのも分かる。ヒヨドリは食いしん坊だ。大ぶりの体のくせに桜や梅の美しい花の蜜を逆立ちになっていつまでも吸っている。モズは癇癪もちだ。キーキーと叫んで忙しく飛び回る。
 メジロは人が悪い。だって俗にいうウグイス色の羽をもっているし、それに、よく梅の花に止まっているから私は長いことメジロがウグイスだとばかり思っていた。ところが鳥類図鑑でこれはメジロだと書いてあるではないか。ウグイスはもっと小さくて羽の色も地味なオリーブ色だ。こんなに小さくて目立たない鳥だとは思わなかった。大人になってから本物はそっと隠れるように梅の枝に止まっていると知った。
 ホトトギスはずるい。自分は卵を温めず託卵でほかの鳥に温めてもらい、ついでに育ててもらう。自分は涼しい顔で「特許許可局」などと威張って啼く。サギは詐欺に通ずるから聞こえが悪い。オオシラサギも困るがゴイサギ、アオサギとなると大きいから、田んぼに入って植えたばかりの稲の苗を大足で踏み潰す。農家では困っている。我が家では田んぼにタニシやオタマジャクシがたくさんいるので、それを食べに入ってくる。少しの脅しでは逃げないので欠苗だらけになってしまう。
 野鳥は好きだが害鳥は困る。みんな生きているから食わねばならないのだが、丹精した作物を荒らすのは困る。私が怒っていると孫が言う。「金子みすずが詠っているよ。『みんな違って、みんないい』ってね」。それはその通りだけど……。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】「手作りの電飾」木村順一  恒例の市原市写真連盟展が11/1(金)~6(水)、夢ホール(市原市更級・スポーツデポ市…
  2.  銚子市は、漁業と醤油の街として有名ですが、2012年に銚子市全域が日本ジオパーク委員会から「銚子ジオパーク」として認定されました。ジオパー…
  3. 【写真】真光寺仏殿(左)。右側は薬師堂が建つ前、本尊を安置していた書院  市原市との市境にある緑豊かな里山、袖ケ浦市川原井…
  4.  10/12(土)から12/15(日)まで開催される、市原歴史博物館(市原市能満)の特別展「旅するはにわ~房総の埴輪にみる地域間交流~」。千…
  5. 【写真】日展 彫刻 2023年  都内六本木の国立新美術館にて、11月1日(金)から24日(日)まで『第11回日展』が開催…
  6.  秋の里山では、山の幸クリの殻斗(いが)の棘が茶色く変わり始め目立つようになる。葉が覆い茂っている林では見分けにくい。花が咲く6月と殻斗が割…
  7. 【写真】Frederic Edward Weatherly『Peeps into Fairyland(妖精の国を覗き見る)』 …
  8. 【写真】お店の前で。『十五や』のTシャツを着た藤本さん(後列中央)と田頭さん(右隣)  緑豊かな市原市東国吉で、県道21号…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】真光寺仏殿(左)。右側は薬師堂が建つ前、本尊を安置していた書院  市原市との市境にある緑豊かな里山、袖ケ浦市川原井…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る