夏鳥たち
- 2014/7/11
- 市原版
遠山あき
夏鳥たちが次々と帰ってきた。留め鳥もいるが渡り鳥の一番手はツバメ。ツバメはスマートで紳士だ。飛び方からしてかっこいいし、第一夫婦仲のよいのが好ましい。雀は愛らしい。チョンチョンと跳ねて歩くところもかわいい。カラスは憎たらしい。私が畑にいると「アホウアホウ」と馬鹿にする。時にはスイカなどつついて食べてしまう。真っ黒で醜いし。
フクロウは寂しがりやだ。闇夜に友を求めて啼く。でも子どものころは怖かった。ウグイスは美声な歌い手だ。しかし唄は一つしか知らない。カワセミは素早い。コバルト色のつぶてが高速で飛ぶようだ。アッと見る間に飛び去る。カワセミを追うカメラマンが黒いカプセルをかぶって徹夜でカメラを構えるのも分かる。ヒヨドリは食いしん坊だ。大ぶりの体のくせに桜や梅の美しい花の蜜を逆立ちになっていつまでも吸っている。モズは癇癪もちだ。キーキーと叫んで忙しく飛び回る。
メジロは人が悪い。だって俗にいうウグイス色の羽をもっているし、それに、よく梅の花に止まっているから私は長いことメジロがウグイスだとばかり思っていた。ところが鳥類図鑑でこれはメジロだと書いてあるではないか。ウグイスはもっと小さくて羽の色も地味なオリーブ色だ。こんなに小さくて目立たない鳥だとは思わなかった。大人になってから本物はそっと隠れるように梅の枝に止まっていると知った。
ホトトギスはずるい。自分は卵を温めず託卵でほかの鳥に温めてもらい、ついでに育ててもらう。自分は涼しい顔で「特許許可局」などと威張って啼く。サギは詐欺に通ずるから聞こえが悪い。オオシラサギも困るがゴイサギ、アオサギとなると大きいから、田んぼに入って植えたばかりの稲の苗を大足で踏み潰す。農家では困っている。我が家では田んぼにタニシやオタマジャクシがたくさんいるので、それを食べに入ってくる。少しの脅しでは逃げないので欠苗だらけになってしまう。
野鳥は好きだが害鳥は困る。みんな生きているから食わねばならないのだが、丹精した作物を荒らすのは困る。私が怒っていると孫が言う。「金子みすずが詠っているよ。『みんな違って、みんないい』ってね」。それはその通りだけど……。