整列したものから見える世界は?

 4月29日(祝)から5月17日(日)まで市原市にあるアートハウスあそうばらの谷ではアートいちはら2015春の会場として友枝望(38)さんによる個展『アライメント』が開催された。個展の名前である『アライメント』とは位置を正しく合わせる整列、配列を意味する言葉。「古い日本家屋が魅力のアートハウスあそうばらの谷を使って、柱や梁、間仕切りなど伝統的な様式を垂直、水平線ととらえて、作品を際立って認識できる空間構成としました。作品とともに古い家屋を隅々まで鑑賞して欲しいです」と友枝さんは話す。友枝さんは広広島市立大学大学院芸術学科を卒業後、ハンブルグ美術大学彫刻学科に在籍し、ドイツを含めた世界で活躍している。昨年のいちはら×アートミックス2014に参加した縁で今回の個展を開催するに至った。
 「普段から、『在る物を再プレゼンテーションする』ということに興味があるんです。同じものを見比べることで相対関係が生まれ、物の違いや善し悪しを発見できます。状況や目線を少し変えるだけで発見や知識が得られ、それが日々の生活に少しの豊かさを与えてくれると思うんです」と説明する通り、アートハウスの中には目を引く作品が広がっていた。
 大きく目を引くのは、会場入り口すぐにある天井からてぐす糸で引かれた物品の数々。「名前の分からない物もあるんですよ」というそれらは、養老渓谷周辺で拾われたゴミを含めた収集品。空き瓶や松ぼっくりなどのどこかに蜘蛛が卵を産みつけていたようで、アートハウスの中には蜘蛛の子が多く育っているようだが、それもまた「変化していくという魅力」なのだとか。電球から小枝まで様々なものを指差しながら、「あれ、なんだろうね」とつい話したくなってしまう。
 次に目に飛び込んでくるのは、天井から吊るされた白い糸たち。てぐす糸かと思って目を凝らしてみれば、一本ずつが短い糸で結ばれている。隣の部屋にも同じように見える糸。「これは父と私、各々の髪の毛を繋ぎ合わせて作った作品です」というから驚きだ!「髪の毛は身体から切り離された物体で素材としてはすごく希薄です。そんな希薄な物の中に、私自身の存在につながるDNAがあり、質量を重ねていくことで空間にも存在感が生まれます。ただ、光の加減によっては亡霊のようにもうつるんです」と独特の繊細さを見せる友枝さん。不思議な雰囲気を併せ持つオーラは、作品だけでなく自身のミステリアス感を増して見せる。芸術作品を文化的な対話道具のひとつと捉える友枝さんは、今後の作品への意欲を、「生産国が違うけれど同じ商品を集めて並べてみたいです。些細な発見を取り入れて、社会の構造を知るような作品を構想しているんです。また市原で作品制作と発表を行いたいです」と語った。

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