いなせな止まり方のウチワヤンマ

 夏の太陽がじりじりと照りつける中、開けた池や沼の中で直射日光をもろに浴びて、挺水植物や水面上に張り出した枝先に水平に止まっている、やや大型のトンボを見かける。腹部の先(第8節)が水平尾翼のように平たく突き出ているウチワヤンマだ。名前に「ヤンマ」とあるが、サナエトンボ科に属し、正確には「ヤンマ」ではない。胸の黒と黄色の縞模様がオニヤンマを連想させるので、言われるようになったのかもしれない。全長80ミリ前後。特長であるウチワ状の突起は黄色をしており、黒で縁取られている。上から見ると相撲の行司が持つ「軍配」に似ているため古くは、トンボ名に「グンバイ」と付いていたようだ。
 止まって縄張りを張っているのはオス。メスを待っているのだが、他のオスが侵入してくるとスクランブル発進をかけ追い出す。止まっている時は、前脚を複眼と胸部の間にたたんで格納し、中脚と後脚だけでバランスを保っている。その姿は、消防の出初式等で見かける江戸町火消し由来の梯子乗りの技の一つである「シャチ」の姿勢に似ていると言われる。それゆえ、「いなせなトンボ」と言われることがある。
 似たトンボに、タイワンウチワヤンマがいる。南方系のトンボで、これまで、東海地方以南が生息地域であったが、地球温度化の影響で生息域が北上していると言われ、千葉県でも近年目撃情報がある。ウチワヤンマよりも全長はやや小振り、ウチワ状の突起全体が黒く、やや小さいことから識別可能である。
 ウチワヤンマは、市原市及びその近郊の開けた池で普通に観察できる。双眼鏡があると、いなせな止まり方やウチワ状の突起をじっくり見ることができる。ひょっとすると、タイワンウチワヤンマの北上を発見できるかもしれない。ただし、日焼けや熱中症対策を忘れずに!

ナチュラリストネット/岡 嘉弘

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