更蝸(こうか)つれづれ 房州浮書絵彫(うきしょえぼり)【市原市】

 市原市在住の倉持光吉さんは、もうすぐ86歳になる。定年退職後、別の会社に暫く勤めていたが、体調を崩し、医者に診て貰うことになった。「自分に向いたことで何かに集中すると、この病気は良くなります」と診断され、何か無いものだろうかと探したそうだ。出会ったのは、戦後、房州館山で発祥した「房州浮書絵彫」。孟宗竹に浮世絵や花鳥風月を彫刻する竹工芸品である。現役時代から喜多川歌麿の浮世絵本を所蔵されていた倉持さんは、人一倍感心度高く興味をもったとのこと。
 早速、教室を訪ね一から教えて貰ったところ、腕はメキメキ上達し、仲間からも褒められる様になった。ところがこの教室は、伝統的な工法が主流で、倉持さんの望む色彩表現及び、細部までの彫り方は本流と違い、やむを得ず教室を離れたという。独自の研究から原画に近い浮き書絵彫技法を確立し、浮世絵、美人画、花鳥風月、書などを彫り、今年で21年程となる。以前は千葉市などで、今は市原市内の教室での指導や作品作りに励んでいる。倉持さん(光峰流)の特徴とする技法は、ぼかし・色むら対策・豊かな色彩表現・繊細な彫り・鹿の子絞り。この高度な技術は、生徒さんたちにより次の世代へと引き継がれている。
 当ギャラリー・和更堂(市原市更級1丁目9の1)でも、倉持さんの作品展は度々開催してきており、今月も29日(水)まで展示中だ(月曜休業)。最近は扱いやすい小物類も増え、好評である。


・相川浩:市原市出身。三井造船で定年まで勤め、退職直後の平成20年、自宅敷地にギャラリー・和更堂を設立。多くの郷土の芸術家と交流する。「更級日記千年紀の会」事務局担当。
TEL.0436・98・5251

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】小山さん製作のヤギ小屋の前で、小山さん・中沢さん夫妻 『クラウディオ・コラッロ』のチョコレートは、小山さんと中沢…
  2.  去年の秋から建て始めた小屋作りもやっと終わり、今は家の南側の庭作りを始めています。ここは、自分の理想の庭づくりに満足のいく広さがあり、日光…
  3.  今回ご紹介するシネマは、「冒険者たち」です。製作国=フランス・イタリア、日本での公開=1967年(昭和42年)、1時間53分。監督はロベー…
  4. 【写真】撮影:関口 武  6月8日から13日、夢ホール(市原市更級)で『小湊鐵道を撮る仲間たち』展が開催される。この写真展…
  5.  市原市椎津の住宅街のなか、車1台分の細い道路沿いにある地域の公園『ららぱーく』。昨年11月、『都市の緑3賞(主催:公益財団法人都市緑化機構…
  6.  5月27日(土)、28日(日)、『白子ライオンズクラブ』主催の『白子ホタル観賞会』が長生郡白子町剃金の第3クリーンセンター公園にて開催され…
  7.  毎年大好評の松山バレエ団いすみ公演が、今年も開催されます。4回目となる今回は、同バレエ団創立75周年記念作品として、新演出を加えた『ジゼル…
  8.  地図やコンパスを使い、エリア内に多数設置されたポイントを多くまわって、点数を競う野外スポーツ・ロゲイニング。これに謎解きとミッション(地域…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】小山さん製作のヤギ小屋の前で、小山さん・中沢さん夫妻 『クラウディオ・コラッロ』のチョコレートは、小山さんと中沢…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る