何度も困難から立ち上がる勇姿 小湊鐵道 房総里山トロッコ出発進行!【市原市】

 昨年秋の相次ぐ台風と豪雨災害。何度も被災し一部区間が不通だった小湊鐵道が、3カ月間に及ぶ復旧作業によって、全線開通を果たしてから半年後の夏の日、憧れの房総里山トロッコ展望車両に乗った。

 まるで大きな籠のような乗り物だ。乗り込む瞬間からワクワクする。発車時刻が来てトロッコが動き出し、手が届きそうなぐらい間近に迫る草木、パアッと広がる田んぼを渡る風、綺麗な水が鏡になって青空に浮かぶ雲を映して流れる川……眺めも香りも音もダイレクトに楽しめる鉄道の旅が始まった。里山の自然と自分との間に、遮る物がない展望車両の開放感。『風鈴駅』の異名を持つのではないかと思うほど、たくさんの風鈴が吊された途中駅の駅舎、待合室のレトロな椅子や木彫りの人形など、美しさ、可愛らしさ、迫力などをたっぷり『魅せて』くれるオブジェ鑑賞も楽しい。
 途中、少し長めに停車する駅では車両を降りて買い物もできる。取材当日は暑い夏の日。かき氷やラムネを買って撮影後、仲良く味わっていた女性2人組に感想を尋ねると「先頭の汽車部分は真っ黒で迫力があって、後続の車両はクリーム色と赤のツートンカラーで可愛いです。トンネルに入ると真っ暗闇で、急に夜になったような、アトラクションを楽しんでいるような、そんな気分でした」。「トロッコ列車が通りがかるのを見かけた地元の人たちが、こちらに向かって手を振ってくれました。子どもから大人まで手を振り合うことで生まれるたった数秒間の繋がりですが、すごく温かい気持ちにさせてくれました」と答えてくれた。
 確かにトロッコ列車を見かけた人たちは、車の運転席の窓からも、遠くの家からも、踏切の遮断棒の向こうからも、笑顔を向けたり手を振ってくれたりした。思いっきり両手を伸ばして振ってくれる人も多い。想像以上の数だった。こんなにもたくさんの初対面の大人と、眼を合わせてニッコリしあう瞬間なんて、今までにあったかなと振り返るが思い浮かばない。
 小湊鐵道は昨秋の台風でダメージを受けた。復旧中に再び台風が来て、また復旧作業の日々。そこへ今度は未曾有の豪雨。ようやく復興したら新型コロナ感染の問題が起こり……続く困難に何度でも立ち上がる勇姿への『おかえりなさい!』や『負けないで!』が、込められているのではないだろうか。やがて終点の養老渓谷駅に到着。また、他の季節にも、ぜひ乗ってみたくなった。

●秋の房総里山トロッコ情報

「ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました」「お待たせいたしました!」と、全線開通を宣言する公式SNSには、たくさんの『いいね』や喜びの声が寄せられた。小湊鐵道ファンはじめ多くの人の期待と応援に応えて、この秋も運行を続ける。12月13日の運行を最後に冬期は運休。再開される春、桜の時期も素晴しく、年間を通じて様々なイベント列車も用意されている。
 ちなみに車両にはトイレが無い。乳幼児連れやトイレが心配な人には、始発の五井駅からではなく、途中の上総牛久駅まで自家用車で来て駅前の駐車場に車を停め(駐車料金1日200円)、終点の養老渓谷まで1時間ほどの乗車を楽しむ方法もおすすめ。

◇懐石料理トロッコ列車
トロッコ列車で懐石料理を楽しみながら、五井駅から養老渓谷駅まで行くプラン。お土産付
◇市原ぞうの国+トロッコ列車プラン
GoToトラベル事業支援対象 五井駅発。トロッコ列車にて市原ぞうの国へ。帰路は普通列車利用。送迎バス付
問合せ:小湊鐵道 房総里山トロッコ専用ダイヤル
TEL.0436・23・5584

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