春先取り!大多喜の里山を歩く

春先取り!大多喜の里山を歩く
~滝、隠れ里、犬岩、巣堀のトンネル~

 3月中旬、大網白里市の『自然観察会やまぼうし』主催(上田弘子代表)ウオーキングに同行取材した。朝から強い南風の吹き荒れた1日だったが、山あいを歩くコースなので風のやんでいる場所もあり、暖かな陽気に24名の参加者の皆さんは足取りも軽く歩いた。
 スタートは、いすみ鉄道総元駅前。ムーミン列車で話題の車輌が駅に止まり出発したあと、準備体操をして297号へ向かう。途中、夷隅川にかかる陸橋に何かがあるのが見えた。何だろう?それは、ムーミンが釣りをしている像だった。なかなかユーモラスな光景。少し歩き見下ろすと夷隅川と西畑川が合流している。ここで、道端にグミの木を発見。愛らしい花が咲いていた。297号に出ると交差点近くで不思議な鳴き声が。皆、珍しい鳥かな?と見上げるが姿は見えない。正体は民家で飼われている犬だった…。口々に「変わった声だね~(笑)」とお喋りしながらバイパス沿いを歩き続ける。
 ここから勝浦市という道路標示の下に三又川バス停。道路下に小さな川の流れがあり、地獄橋という名前が。なんでも勝浦と大多喜の境にあるこの場所で、昔、合戦があって流血騒ぎがあったからだとか。また歩みを進め、四ッ石バス停手前を右に入る。スタッフの「これから山に入りま~す」の声。前方を見ると、車輌進入禁止の標識。足元にはフキノトウがいっぱい顔をのぞかせていた。すぐに見えてきたのは、滝見橋。ここから眺める景色は、とてもバイパスから数分のものとは思えないほど、のどかで美しい。川の上流にはダム、下流には頼朝伝説の四ッ石がある。眼下に見える川の流れの中には大きな石が飛び飛びにあり、小さいながら滝も。
 更に進むと道は二股に分かれ左へ上る。正面に祠がある分かれ道を右に。すると数軒しか民家のない集落が。かつて「桃源郷のようなところ」と紹介されたこの地は、今もその趣を失っていない。参加者が「隠れ里ってかんじだね」、「鄙びた風情だけど、家も庭もきれい」と感嘆の声を上げる。梅が満開で桃の花がほころび始めた集落を通り過ぎ、美しい竹林の小径を歩く。さすが『自然観察やまぼうし』、「ほら、これはウラジロ。お正月のお供え用のお餅の下に敷く葉っぱ」など道々、草花の名前や特徴などを教えてくれる。
 歩き始めて1時間半ほど経ち、「さあ、犬石山へ登ってみよう」と、散策から低山ながら山登りに。今回は珍しく男性参加者が少ない中、最高齢の小川さん(スタッフでもある!)が先頭に立って尾根歩き。この日から数日前にも強風が吹いたためか、細い未舗装路は枯葉や折れた木の枝で埋め尽くされ、思わず足元の枝を拾い杖代わりに持って歩く人も。ふもとの里に比べ、まだ何もないように見える山のあちこちに春の訪れを告げる様々な草花が芽吹いていた。落ち葉の隙間に点在して咲くマムシ草、地面に張り付くように葉を広げたアザミ。木々の枝先には若い緑の柔らかな葉や蕾。
 やがて馬頭観音が見え、その先をエイエイッと登っていくと、やっと頂上に到着。犬の形をした犬岩が出迎えてくれた。掲示板には、平沢と川畑地区の境に犬石という山があり、この山は三又、川畑、黒原の三集落の共有林であることや頂上に犬の形をした巨岩があって、これを里人は犬石と呼び、約70年前に犬石の頭部分がなくなると里人は嘆き悲しみ、その後、農道整備事業の際に工事責任者と地元の人が犬の頭に似た石を探し犬石にのせた等、記されてあった。堂々たる犬岩を拝ませていただき下山。風向きが変わったのか、ザワザワと梢を揺らす音にヒョウヒョウと風が大気の中を回っているような音が加わる。ふもとの「隠れ里」に着き、次は「本日のメイン」、62年前に造られた素掘りのトンネル、川畑隧道を目指す。
 山の絞れ水に潤った瑞々しいユキノシタに「やっぱり天ぷらが一番美味しいよね」と、食べ物の話しで盛り上がる。立派な舗装路の農道まで来ると、左手に7年前に完成したばかりの犬石トンネルが見えるが、前方にのびる細い道を直進する。すぐにトンネル入口に着く。一見、コンクリ造りのトンネルのようだが入口部分だけ。あとで補強したのだろう。トンネル内部に入ると素掘りで、狭くなり真っ暗。道が真っ直ぐなので、はるか向こうに出口が見えることが救い。何人かが持つ小さな懐中電灯の微かな明かりを頼りに、ゆっくりと歩を進める。ところどころ落石か、大きな石がゴロゴロ落ちていて蹴つまずかないように気を付けて歩く。200メートル弱のトンネルを抜けると、ゆるい下り坂。皆、トンネル体験に「怖かったね~」、「みんなが一緒だから入れたよ」ちょっと興奮状態の様子。
 最後は遊歩道のある黒原の不動滝へ。ここで昼食をとる。スタート地点そしてゴールでもある総元駅までは近い。里の春の訪れを満喫した半日コース。2つ先のいすみ鉄道終点・小湊鉄道と接続している、上総中野駅からは山桜の美しい大塚山ハイキングコース等もある。是非、気軽に行ける房総の低山へ春を楽しみに出かけてみては。

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