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曽祖父と戦争 全国作文コンクール読売新聞社賞受賞
- 2015/1/30
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いすみ市立岬中学校3年生の北根るるかさんが、読売新聞社主催の『第64回全国小・中学校作文コンクール』中学校の部で栄えある読売新聞社賞を受賞した。1万8千556点の中から選ばれた北根さんのタイトルは『絆~曽祖父を探して~』。太平洋戦争中、海水兵長として戦い命を落とした曽祖父の気持ちを想像し、溢れ出る自分の気持ちを18枚の原稿用紙に素直に綴った大作だ。
小学6年生の時に『岬町史』を使って調べものをしていたら「ひいおじいちゃんが載っているよ」と母親が教えてくれた。ある頁に、曽祖父の氏名と階級、硫黄島で昭和20年3月に戦没したことが記された一行を見つけた。70年前の戦争という出来事はピンとこなかったが、曽祖父について知りたいとの思いが芽生え、まずは戦争について調べ始めた。硫黄島は東京都小笠原諸島の南端近くに位置する島。1945年2月、アメリカの進軍を少しでも遅らせるために戦争が繰り広げられたこと、硫黄島の住民が故郷を追われたことなどを知った。戦場に向かうときの曽祖父の気持ちを考えずにはいられなくなった。「出征する時、どんな気持ちだったの?」、「残していく家族のことが心配だったよ」まるで曽祖父が生きているかのように北根さんと曽祖父との対話が描かれている。
「とても感性豊かな生徒。会ったこともないひいおじいちゃんのことを想像すると涙が止まらなかったようです」と国語科担当の末吉登紀子教諭。「先生や選んで下さった審査員の方々に感謝したい」と謙虚に話す北根さんは、かなりの努力家でもある。作文を書くにあたり、戦争についてのノンフィクションなど5、6冊の分厚い本や新聞の切り抜きを熟読した。写真集『硫黄島』には、参考にした証にピンクの付箋がたくさんついているが、どうしても向き合うことのできない生々しい写真はクリップで閉じられたままだ。
遺族に悲しみを残し続けている戦争への憎しみは、北根さんに平和という言葉の意味を考えさせた。「『戦争』と『平和』は紙一重の言葉に思える」自国の平和のためにと他国と戦うことの矛盾を指摘する一行。文化や考え方の異なる相手の立場や気持ちを理解しようと努力すれば、解決の糸口が見つかるかもしれない。現在を生きる私たちが、平和のために、この考え方を未来に引き継いでいかなければ。そんな使命感が心の中に生まれた。
北根さんには小児科の医師になりたいとの夢がある。アレルギーを患っていた幼少の頃、病気を治す医者という職業の偉大さを感じた。曽祖父のことを考えていくうちに、命を救うことのできる医者になることが平和を築く力になることだと気がつき、夢を実現したいとの思いがさらに強くなった。曽祖父に自分の夢を語り、文を締めくくっている。
受賞を一番喜んでくれたのは祖父。「よくやったね。亡くなったお父さんも喜んでいるよ」と声をかけてくれた。