絵で自分を表現

歴史や文学は受け身
絵で自分を表現

 悲しげで憂いを秘めた女性。どこか儚さも漂う。「なぜか、似たような雰囲気のモデルを選んでしまうのです。静かだが個性的なところに惹かれてしまうのかも」と話すのは山武市在住の齋藤永良さん(64)だ。30歳代、写実画の団体である白日会の公募展『白日展』に応募し受賞するようになると、「とんとん拍子に白日会の会員になれた」そう。だが、「画家として自立したいとか売れたいという会員の気持ちと僕はちょっと違って、大きな声では言えないですけれど、僕は趣味の延長のような感覚で絵を描いてきたので、プロの多い白日会は辞めてしまったのです」
 というのも、もちろん小さいころから絵を描くのは大好き。高校へ進学すると美術部にも所属し美大も勧められた。しかし、受験勉強で日本史の面白さにハマり、「とにかく東京へ行きたかった」と上智大学文学部へ。「大学紛争の時代でロックアウトがあったり、勉強はしなかったですね(笑)。美術研究所などへ通ってデッサンの勉強は続けていましたけど」と話す齋藤さんが選んだその後の就職先は、高校の日本史教師だった。そう教職につきながら絵を描き続けていたのだ。
 県立流山高校から東金高校、成東高校、東金商業と移ったが、「どこの高校へ行っても、美術部か漫画研究会の顧問ができたのはラッキーでした」と振り返る。といっても「大学進学のための日本史の授業もしっかりやったつもりです」と。そんな日々の中、白日会を辞めた後も、家に帰ると自室で絵を描く生活は続けていた。結果、「上野の公募展に入選し、銀座の画廊で個展も開くことができました。振り返ってみると、できたらいいなというささやかな夢が叶っていました」と、実績は趣味の延長に留まらない。
 東金高校時代、美術教師として赴任してきた今もモダンアート協会などで活躍する芝章一さんと出会い、公募展への出品を後押ししてもらった。そんな芝さんや東金近郊に住む画家たちで作る『八鶴の会』での作品展は、今夏も東金のサンピアで開催された。そのかたわら、月に1回、山武市中央公民館で講座『日本史の会』を持ち、時々会員とともに歴史散歩にも出ているという。「歴史や文学は受け身から脱せませんが、絵は自分で創造している。自分を表現するとストレスが減るでしょう。絵を描いていると肩こりが治ったりするから。合っているのでしょうね。絵と歴史はこれからもずっと関わっていくと思います」と齋藤さん。

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