~時流に翻弄されぬよう~
山里 吾郎

 この2、3年、時の流れの速さを痛感している。特に昨年は、年明けから暮れまでまさに一足飛びだった。
 もちろん年を取ったせいもあるだろう。だがそれ以上に、一刻もとどまろうとしない時流の変化に、振り回されていた感がある。
 例えば季節。日本の四季はゆったりと流れ、日々の生活に潤いや恵み、時には我慢や辛抱をもたらし、それが人間の営みとなってきた。しかし昨年は冬を彩る積雪もなく、春先から気温が乱高下。梅雨の恵みは時折襲うゲリラ豪雨にかき消され、夏は日差しを忘れたようにひたすら雨に悩まされた。
 その影響だろうか秋はほとんど季節感を失くした。本来、一番おしゃれを楽しみたい時なのに、秋物の出番はほとんどなし。10月末には木枯らし一番が吹き、「寒いね」を連発しながら師走から年明けを迎えてしまった。
 異常気象は「地球温暖化によるもの」に異論はない。だが急変の加速ぶりは人間の想像を遥かに超えてきている。「孫の代までこの星はもつだろうか」。数年前に抱いたうっすらとした不安が、現実味を帯びている。
 それ以上に世情の不安定さはここに極まった。政治、経済、社会…。特に政情不安はグローバルな単位でこの1年を慌ただしく駆け巡った。
 米国にトランプ大統領が就任したのは昨年1月だ。メキシコ国境に壁、難民の受け入れ拒否など首を傾げざるを得ない政策を次々と表明したうえ、実際にTPPから離脱し、パリ協定からの撤退も決めた。安倍首相とは親密ぶりをみせているが、米国内では反トランプの論調が静まる気配を見せていない。
 さらにミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮。その暴挙はこの1年間、日本の政情を翻弄し続けた。「挑発対制裁」。北朝鮮問題は米国、韓国、日本、中国、ロシアなど世界の主要国を巻き込む形で今年も政情不安の大きなタネとなり続けるだろう。
 国内政治も混乱した。政権は集団的自衛権を可能にする安保法制やテロ等準備罪の成立を強引に押し進め、森友・加計問題の噴出を隠すように総選挙へ走った。結果、野党が分裂、政治は国民と遊離したまま勝手に突き進んではいないか。
 事件や事故の多発や大手企業の粉飾決算、データ改ざんなど日本の「安心・安全神話」も大きく崩れ去ろうとしている。
 今年は平成になって30年。せめて時流をしっかり見極め、日々是好日につなげることを思う。もちろん私だけではなく、拙文に最後までお付き合いくださった読者の皆様にも。

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