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部活動へ捧げた時間がくれたもの
- 2015/12/4
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千葉県立長生高校剣道部(男子)
「僕たちの剣道部メンバーを一言で表すと『寄せ鍋』です!」。そう独特な言い回しで表現するのは長生高校3年生で剣道部キャプテンを務めた宇野政志さん。剣道部は、今年5月に行われた第62回関東高等学校剣道大会千葉県予選会(男子団体)にて見事優勝を果たし、6月の第68回千葉県高等学校総合体育大会剣道大会(男子団体)で3位という好成績をおさめた。
「『寄せ鍋』というのは、メンバーの個性が本当に様々だからです。私立の強豪校だと戦い方に統一感があったりするんですが、僕たちは違う。でも、異なる素材を『それぞれが自身の戦い方を考える』という火にくべることでいい出汁がでた。それが勝因です」と、宇野さんは面白い上に納得のいく説明をする。
顧問の近藤正利さんは、「私は今年赴任してきたのですが、前の顧問の方から練習については細かく聞いていました。あっという間に優勝して驚きもありましたが、それも普段から一生懸命に練習していた結果なんでしょう」と嬉しそうだ。平日のみならず土日も休むことなく竹刀を振り続けた。
副キャプテンの野口雄斗さんは高校から剣道を始めた。「中学では野球をやっていたんですが、イチからできるスポーツに挑戦したかったんです」と話す彼は、180センチの高身長を生かして片手で相手の面を突く技を磨き、その技術は近藤さんも「高校からでは普通考えられないほど!」と舌を巻く。
石渡匠さんは団体戦で先鋒というポジション、1番目に戦う選手で試合の流れを作る重要な役目を果たした。「プレッシャーを感じることもありましたが、特に考えないようにしていました。ただそれは、自分がどんな結果を残しても仲間がしっかりと繋いでくれるという信頼があったからかもしれません」と、石渡さんは少しはにかむ。ちらりと近藤さんに視線を走らせ、「こういう剣道をやれと指導された時期も昔はあって、それも勉強になりました。けれど、近藤先生は僕に自分の良さを生かして戦う剣道を教えてくれたのが嬉しかったです」と続けたのは心からの言葉だろう。
榊原康平さんは、1番の思い出を「夏の合宿!」だという。「学校に3泊4日の泊りがけでやるんですが、暑いし体力も限界。30分の打ち合いをしたり、きつかったです。でも、そこを乗り越えたんだから何でもできるという自信に繋がりました」と誇らしげ。『夏の合宿』は他メンバーにも印象が強く、何度も笑いが巻き起こる。
さらに、取材中の雰囲気をがらりと変えたのは吉野正人さん。「僕はいつでも自分中心なんで!」というと、次々とメンバーも笑って声を上げる。「自由だよね!」、「空気読もう」など様々なことが叫ばれるが、次第に「面をつけると人が変わるんですよ」、「誰にでもズバッと意見を言えるので、大切な存在なんだよな」と続ける声も。一瞬でメンバー間の空気がほころぶのを感じる。
「僕の出番は最後から2番目。他の選手の勝敗を見ながら、自分の戦いを攻めるのか守るのか考えていました」という吉野さん。恐らく彼は、誰よりもメンバーのことや雰囲気を気にかけていたのかもしれない。そして大会の結果に貢献した2年生、鈴木涼太さんと三上航平さん。「年下の元気なパワーで押し上げていようと頑張りました。プレッシャーに負けてしまったこともあったけれど先輩たちが受け入れてくれました。これからは引っ張っていける存在になりたいです」と新キャプテンの鈴木さん。「みんなのアイドルなんです」と3年生に可愛がられる三上さんも、「また関東大会の団体戦で優勝して、優勝旗を持って帰ります。先輩たちの軌跡を越えたいです。もう一度写真をとりたいな」と抱負を語った。
過酷な練習や筋肉トレーニングを乗り越えて、彼らは結果を勝ち取った。不安を心に秘め、考える力を身につけて、仲間を信じた。「なにより、自負を持てるようになりました。やってきたことの価値を認めて、大きな目標だと思っていたことが小さく感じるように変化したんです」と宇野さん。剣道で得たものは、それぞれ違うものかもしれない。3年生メンバーはすでに剣道部を引退した。だがそこで手に入れた力を糧に、彼らは新たなステージへの一歩を今、大きく踏み出していることだろう。
問合せ 長生高校
TEL 0475-22-3378