房総往来

房総往来
大多喜城 山里 吾郎

 今風に言えば「フィルムコミッション」。町興しの一環として映画やドラマのロケ地を誘致する活動が県内でも盛んだ。成功すれば全国的に脚光を浴び、観光面など絶大な集客が見込める。「何とかわが町を舞台に」。そんな町のひとつ、大多喜町を訪ねた▼主人公は本多平八郎忠勝。徳川家康に仕えた勇将で、徳川四天王の一人と言われる。「家康に過ぎたるものは二つあり、唐のかしらに本多平八」。こんな狂言の一説を聞いた方も多かろう。「唐の頭」とは家康が好んで集めた中国原産の「ヤク」の角をつけた兜のことだ▼幼少の頃から家康に仕えていた忠勝は天正18年(1590年)、大多喜城主となる。豊臣秀吉の命で関東に移封された家康に従い、東方特に安房里見氏への備えとして着任した。忠勝が開いた上総国大多喜藩は次男忠朝に引き継がれ、本多氏は約26年にわたって大多喜城下を治めた▼現在の大多喜城は昭和50年、県立総南博物館として本丸跡に再現されたものだが、城郭まで続く静寂な木立と合わせ、難攻不落の名城を偲ばせる。また旧道沿いには昔ながらの商家や家並みが広がり、城下町としての名残を今もとどめている▼忠勝は出身が愛知県岡崎市、桶狭間や関ヶ原など多くの合戦に参加。大多喜城を忠朝に継がしたあとは三重県桑名藩の城主を務めるなど生涯の足跡は大河ドラマらしい全国規模の広がりを持つ。ちなみに敵対していた里見氏について館山市が同様に大河ドラマでの誘致を目指しており、大多喜と館山の合戦も見ものだ。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…
  2. 【写真】教室の講師と子どもたち  JR浜野駅前と五井駅前でダンススタジオを経営する堀切徳彦さんは、ダンス仲間にはNALUの…
  3.  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『レイクサイドスペシフィック!─夏休みの美術館観察』が7月20日(土)に開幕する。同館は1995年竣…
  4. 【写真】長沼結子さん(中央)と信啓さん(右) 『ちょうなん西小カフェ』は、長生郡長南町の100年以上続いた小学校の廃校をリ…
  5.  沢沿いを歩いていたら、枯れ木にイヌセンボンタケがびっしりと出ていました。傘の大きさは1センチほどの小さなキノコです。イヌと名の付くものは人…
  6. 『道の駅グリーンファーム館山』は、館山市が掲げる地域振興策『食のまちづくり』の拠点施設として今年2月にオープン。温暖な気候と豊かな自然に恵…
  7.  睦沢町在住の風景写真家・清野彰さん写真展『自然の彩り&アートの世界』が、7月16日(火)~31日(水)、つるまい美術館(市原市鶴舞)にて開…
  8.  子育て中の悩みは尽きないものですが、漠然と考えている悩みでも、種類別にしてみると頭の整理ができて、少し楽になるかもしれません。まずは、悩み…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る