農家イキイキ 家族経営協定
- 2013/6/14
- 市原版
農家イキイキ 家族経営協定
千葉県は男女のよりよいパートナーシップの確立を進めるため平成19年度から『千葉県農山漁村いきいきアドバイザー』を認定している。農林水産業に従事し、地域の活性化や男女共同参画推進活動に積極的に取り組み、周囲の信望が厚いことなどが条件。同産業に関する起業や直売、食育、若手育成支援、関係組織の男女共同参画、技術や文化の伝承などを地域に働きかけ自主的に活動する人だ。市原市では伊場美津子さん(69)(左)が平成20年に、苅米静代さん(65)(右)が平成21年に認定された。
農業を営むお二人がアドバイザーとして周囲に勧め、自ら結ぶのが『家族経営協定』である。経営方針、仕事や家事の分担、給与、休日などを家族が対等な立場で話し合う約束事。「紙一枚だけれど夫と話し合う時間が増えた。協定は個々に収入があるのが特徴。作物の収量を増やしたり、新しい事業を考えたり創意工夫しやすい」と話すのは永吉に住む伊場さん。農産物直売所を運営したり、農業の女性起業家グループなどの責任者を務めてきた。県のセミナーや海外研修で学んだことを所属生活研究団体で広め、料理教室や講演会も開いている。普段から農作業のほかに収穫物や手作り惣菜をJAの小売店に納め多忙だが、仕事を夫と役割分担して生き生きと働く。自分は加工品、花の栽培、野菜の収穫や出荷など、夫は野菜の栽培をする。お互いに忙しい時期は手伝い、相手にパート代を支払う取り決め。「義母を介護したときも直売所は閉じたが、夫と相談し、仕事、介護、家事を手分けした」そうだ。
平成12年から協定を結ぶ苅米さんは「妻や子の立場でも設備投資できるし、学校を卒業し、新規就農する若者もお小遣いではなくお給料制だと責任感とやる気が出る」と話す。海保でミカンの観光農園『房総十字園』を営み、農産物加工場を持つモデル農家として国内外から視察団を受け入れてきた。伊場さん同様に団体役員を引き受けたり、研修を受けたりと忙しいが、「家族がそれぞれの個性やアイデアを生かせる」と表情は明るい。苅米さんは野菜の栽培と加工品作り、夫は果樹園、長男は水稲を受け持つ。3人の子どもを育て、ジャムやお菓子作りを担う長男の妻、真弓さんは「自分が作ったものが売れると嬉しい。直売所に配達する母が売れ筋を教えてくれる」と楽しそう。同園は平成17年に法人化し、家族全員役員となった。
同協定はアドバイザーと千葉県千葉農業事務所や関係機関が個々の農家にあったルール作りを手伝い、同事務所などが立会人となる。後継者が就農や結婚するとき、親から子へ経営を移譲するときなどに結ぶとよく、結び直しも可能だ。また、一人ひとりが経営主と連名で『認定農業者』に申請できるというメリットもある。農業経営改善に取り組む人を育成する制度で公的なサポートが受けられる。「夢のある農業を営むお手伝いをしたい」という伊場さん。取材日は自家製味噌を積んだ軽トラックで駆けつけ、農作業の繁忙期にもかかわらず、体験型交流起業活動について苅米さんと意見を交わしていた。