映画好きが集まった!~ちば外房映画祭2023~【茂原市】

【写真】各賞受賞作品の監督。前列左から2番目は映画祭実行委員長、後列左端は審査員のミヤザキさん。グランプリ受賞の全監督は前列左から3番目。

 

 茂原市高師のアスモ劇場にて、10月29日、『ちば外房映画祭2023』が開催された。初回ながら短編映画196作品の応募があり、その中からノミネートされた10作品が上映された。映画祭実行委員長は、「非常にクオリティーの高い作品が集まりました。10作品すべてご覧になった方も多く、こんなに沢山の方々に観ていただけるとは思いませんでした」と顔をほころばせた。初代グランプリは、全辰隆(チョンジニュン)監督の『ミヌとりえ』。グランプリ、準グランプリ(2作品)、審査員特別賞の全4作品は、千葉市中央区の京成ローザ⑩にて2024年上旬に公開される。

1日だけの映画館

「ミヌとりえ」の1シーン

 はっと息をのむ、思わず吹き出してしまう、じわっと目頭が熱くなる。次から次へと上映される10本の映画が、満席の会場を魅了した。作品は30分以内の短編で、一番短いものは5分55秒。作品ごとに監督や演者が登壇し、舞台挨拶が行われた。「撮影の舞台裏や作品に込めた思いを直接聞くことのできる貴重な機会です」と実行委員長。観客と映画関係者との距離も近く、休憩時間には気軽にサインを求めたり、歓談したりする姿が見られた。審査員には、映画監督の佐近圭太郎さん、映画アドバイザーのミヤザキタケルさん、京成ローザ⑩の映写技師長の3名、司会には映画ソムリエの東紗友美さんと、一線のプロが招かれた。
 審査員のミヤザキタケルさんは、「10作品はいい意味でバラバラ。内容や表現方法が幅広い」と説明する。千葉市緑区から訪れた女性2人は、「10本いろいろあって新鮮」、「監督や役者さんのお話をきいて、そこまで考えているんだと感動しています」。『ミヌとりえ』が印象的だったという大網白里市からの男性は、「やわらく透明感のある作品でした。監督の次回作が楽しみ。クラウドファンディングにも協力したい」と、映画三昧の1日を満喫した様子だった。
 グランプリを獲得した『ミヌとりえ』は、日本統治時代に韓国の群山に暮らしていた祖父を持つ日本人のりえと、韓国人青年ミヌの物語。亡き祖父が残した手紙の受取人を探し群山を訪れたりえを、ミヌが手助けする。「2人の若者の出会いから、日韓の歴史にまで物語が波及していきます。映像の美しさ、役者の演技、演出、すべてがすばらしかった」とミヤザキさんは評価する。在日3世の全監督は、秋田の高校を卒業後ソウル大学へ進学し、韓国で映画製作を始めた。「世界は繋がっている。その境界にいる人々を描いていきたいと思っています。今回の受賞は大変うれしく、自信にも励みにもなります。短編映画を見てもらえる機会は少ないので、ぜひ劇場の暗い空間で物語の世界に浸っていただきたい」。

映画で地域を豊かに

 映画祭を主催した実行委員会の主体となったのは『合同会社外房フィルムコミッション』。実行委員長でもある同社の代表は、映画専門学校に学び、自主映画制作も手掛けていた。その経験と人脈を活かし、映像作品ロケ地のコーディネートを行う事業を2021年12月に立ち上げ、映像制作会社とロケ地を結びつける検索サイトを運営している。「地域にあるものを有効活用し、映画を通じて外房の魅力を発信、地域の活性化につなげたい」。
 当日は分刻みのスケジュールが滞りなく進行し、観客は十分に映画を堪能した。地元を盛り上げる活動を続ける『もばら街育プロジェクト』と、『茂原ショッピングプラザアスモ』が実行委員会に名を連ね、映画祭を支えた。スタッフの1人は「映画ファンがこんなにいっぱい」と、目を輝かせていた。高校生6人が、受付や関係者誘導などボランティアとして活躍。これには、実行委員長の「自分が映画を撮りたいと思った高校生の時に、茂原には仲間がいなかった。映画の世界に興味がある高校生に、映画製作のプロたちと触れあう機会を持ってもらいたい」という思いが込められている。審査員特別賞を受賞した『寄り鯨の声を聴く』の関係者は、監督と演者ら7名が駆け付けた。同作は初の一般公開。主人公の父親役の俳優・山口森広さんは、「観客とスタッフの皆さんが熱い会場でした」と笑顔を見せた。ミヤザキさんは、「映画館離れと言われる中、映画を求めて来てくださる方がいて感激しました。この映画祭から羽ばたく監督が出てくれたらうれしい」と話す。

「寄り鯨の声を聴く」舞台挨拶

 京成ローザ⑩で上映される作品は、グランプリ『ミヌとりえ』(全辰隆監督)、準グランプリ『東京ブラッディベリージュースインシデント』(大倉寛之監督)、『あの人だけの名前』(三ツ橋勇二監督)、審査員特別賞『寄り鯨の声を聴く』(角洋介監督)の4作品。公開情報は決まり次第、外房フィルムコミッションのホームページや公式X(旧Twitter)などで発信される。また外房フィルムコミッションでは、撮影に使用可能な空き家や空き地、店舗や倉庫などの登録物件を募集している。詳しくは問合せを。

 

問合せ:合同会社外房フィルムコミッション

Tel.050・5527・1964

https://sotobou-film.com

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