これからの老後を、あなたは誰とどう過ごす?

 1月27日(土)、茂原市役所市民室で開催された『第9回茂原市ハートフルフェスタ』。茂原市男女共同参画大会の今年の講師に招かれたのは坂下晴美さん。昭和40年より茂原市役所の税務課、福祉事務所に勤務し、その後、養護老人ホーム長生共楽園で生活指導員や副施設長を務めた。茂原市では3人に1人が65歳以上という現状。坂下さんは『老いの旅路~今、あなたの前になにが見えますか?~』をテーマに、長年の仕事で培った経験を基にして、老後をいかに楽しく豊かに暮らすためには、どのような心でいるべきかを説いた。
 「超高齢社会が抱える問題は数多あります。退職や自治会の脱退、親戚づきあいの希薄によって縁遠くなります。そして肉体が衰え、認知症を患う方も多い。加えて金銭面での不安もあり、環境によっては性格もきつく変化するかもしれません」と坂本さんが話し始めると、会場に集まった約120人の参加者は真剣に耳を傾ける。
 各種の詐欺事件は年々手口が巧妙化し、老々介護のストレスによる自殺や他殺、虐待は後を絶たない。いざ自分の身に降りかかるまで他人事だと思っているのに、当事者になるとどう対処すべきか全く見当もつかないものだ。「介護問題による事件は多すぎて表に出てこないだけで、数え切れないほど起きています。かつては老人ホームに入るなんて、と世間の目もありました。でも、もし家族でカバーできなくなったら将来的に入居できる施設を見つけて、まずはデイサービスやショートステイから考えてみては」と、坂本さんは説明する。
 だが、まずは楽しく老後をすごせればなにより。そのために必要なことは何か。一日三度の食事は基本で、しっかり栄養をとること。寝巻のまま日中過ごさないこと。一度使用した汚れものは勿体ないからと思わずに捨てること。そうして生活の身なりを整えるだけで気持ちが前向きになり、一歩外へ出る元気が湧く。そして、一番大切なのが会話をすることだ。
 坂本さんが、「寂しくて振り込め犯と長電話という川柳があります」と言うと、会場に笑いが起こる。だが、それは今話せる相手が当たり前に存在しているから笑えるのだろう。「みなさん、最近誰かを褒めましたか?褒めることは、お金を使わずに相手を喜ばせ、心を穏やかにします。褒められたら、次はどうしようかと発展もします。笑顔を作るためにも、これから何かしら相手の褒める場所を探してください」と訴えた。 約1時間半の講演では、坂本さんの見た介護の世界がいくつも語られた。人は生まれた以上、必ず死へ向かう。綺麗事では終われない。だが、やはり人は支え合えるのだと感じる実際のエピソードに、参加者達が涙する場面も見られた。   

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