身近な自然を感じてみよう
- 2013/3/15
- 市原版
身近な自然を感じてみよう
「暑い夏の日、目の前に突然舞いおりてきたオオムラサキ。くねくね峠に棲むヒキガエル。帽子を落としたことを教えてくれたコナラの木」市原市瀬又在住の田頭芳樹さん(48)が近所の自然の中で出会い、心を通わせた生き物たちだ。「身近にどんな生き物がどんな風に生きているかを知ってもらいたい」と立ち上げた『散歩道プロジェクト』10周年記念講演とビデオ上映が2月16日に市津公民館で行われ、26名が熱心に耳を傾けた。
田頭さんは1994年に瀬又に移り住んだ時から周辺の豊かな自然に感動してよく歩き回った。やがて宅地開発が始まり、里山が砂漠のようになっていくのを身が削られるような思いで見てきた。森のために自分ができること、身近なありのままの自然を記録に残していこう。これが同プロジェクトの始まり。まずは自身が名付けた「くねくね谷」などを記載したオリジナルの地図を作った。その後、県のレッドデータブック(絶滅危惧種のリスト)を頼りに貴重な生き物を探してみたところ、オオタカやカタクリなど90種類以上もこの近隣に生息していることがわかった。最重要保護生物であるニホンアカガエルの卵は田んぼの水の干上がりが原因で10年間で10分の1にまで減ったという。水が涸れそうな場所にある卵を家に持ち帰って育て、田んぼに水が戻った頃に放す『アカガエルプロジェクト』も行った。また、土に残った足痕からカメがダイサギの獲物になったことや、アズマヒキガエルのオス同士の戦いなど、身近な自然の中で繰り広げられている小さな物語を細かい視点で観察、記録に残してきたものを写真を見せながら楽しくわかりやすく紹介した。
後半は瀬又の生き物や草花がキャストをつとめる『散歩道のある一年』と題した自主制作ビデオを上映。夏は青々としていた木々が秋には黄色に色づき、冬には葉が落ちて枝だけになる。そしてまた春が巡る。同じ場所での四季の移り変わりの映像が、田頭さん作曲の自然の魂を感じるような音楽とともに流れ、まるで森の中にいるような気分に包まれた。オリジナルの音楽には散歩道で録音した木々のざわめき、虫や鳥の鳴き声などの自然音も重ねられていた。
「里山を崩して公園をつくり花を植え、小川をコンクリート貼りにしてドジョウやメダカを絶滅させておいて魚を放流することが自然保護になるのか?」田頭さんは疑問を投げかける。森では落ち葉は分解され、土壌の養分となるが舗装された道路の落ち葉はゴミとなり、整備された小川では有機物が分解されないのでヘドロがたまる。「大切なことを忘れている。ありのままの身近な自然は財産だと気づいてほしい」1人でも多くの人の心に訴えかけるため、これからも自らの足で市津の里山を歩き、写真や映像を通して『散歩道プロジェクト』を追求していく。
問合せ 市津公民館 小川さん
TEL 0436・74・5516
散歩道プロジェクト
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