ふるさとビジター館
不思議な産卵をするトンボ
オオアオイトトンボ
秋遅くまで飛び回るオオアオイトトンボ。緑色の金属光沢があり、日光に当たるとキラキラと美しく輝くトンボです。体長は、40から50ミリと一般のイトトンボの仲間よりもふた周りほど大きく、ふわふわと飛びます。羽を広げて停まる姿も、閉じて停まるイトトンボと異なります。実は、分類上はイトトンボの仲間ではないのです。
6月中旬頃羽化し、夏の間は森林の奥にひっそりと潜み、秋深くなると水辺に戻り産卵します。オスは産卵期になると腹の先端に白い粉を吹きます。産卵する場所にも大きな特徴があり、多くのトンボが川や池の水、あるいは水辺や水中の水草に産卵するのに対し、このトンボは、何と樹木の樹皮に産卵します。
樹木と言っても、池や沼などの水面に張り出した生きている枝に限られます。樹皮内部に産み付けられた卵は、そのままの状態で越冬し、春になると、孵化して、幼虫が真下の水面に落下するのです。その後、幼虫(ヤゴ)は羽化する6月中旬頃迄、水生生活をします。
しかしながら、私が観察をして驚いたのは、樹木の下に水がない状態で産卵する様子をみたことです。そこは水田で、産卵時の秋には水はないのですが、翌年の春には水が貯められているところです。事実、5月にその水田で多くのヤゴを確認しました。このトンボは、水が張られることを知っているのでしょうか? 実に不思議です。
平地から山地の樹木に囲まれた池沼周辺で比較的容易に観察できます。産卵は、午後活発になります。多くの連結したトンボ達が、森の中からふわふわと水辺の樹木に飛んできて、日光を浴びながらキラキラと集団で産卵する壮観な様子を、ぜひ観察してみてください。
ナチュラリストネット/岡 嘉弘