窓際の男

窓際の男
文と絵 山口高弘

 喫茶店は満員でした。それも高校生ばかり。坊主頭の一団が、鏡が気になる女子高生が、教え合ったり、質問したりして勉強している。「やべえ、分かんねえ」「今日は徹夜だな」そうか定期試験が近いのか。ようやく窓際の席を見つけ、僕は高校生に挟まれて座りました。英会話の本を広げ、『オリンピック会場はあちらです』なんて会話を想像します。
 左隣りの女子高生がこちらを気にしている。女友達と会話しながらチラと見てくる。まさか僕…いやいや、僕の右隣りの男子高生を、か。窓際で静かに国語を勉強している、前髪の垂れた美少年。恋心の間に座っちゃったか。申し訳ないな。ただ、少年少女よ、友達と勉強しても気が散るばかりだぞ。僕は、自分が大学の頃のテスト前を思い出しました。
 少し肌寒い夜でした。僕と4人の男女が集まって、イタリア語の試験勉強…を始めるわけがない。クラスメイトのお嬢様が京都弁で話すたび、京都弁ええなあ、グラッチェ!と男は盛り上がるし、音楽はかけっぱなしで、夜更けに部屋の主がようやく、「よし!」と意を決したかと思えば、「ギター弾こう。歌うぞ」
 そんな夜も明けて何も頭に入らずに、皆で外の公園に出たら、見事な朝焼けでした。そこは高台の公園で、眼下の住宅街はまるで金色。やがて朝日が顔を出して、ジャングルジムの隙間を一つ一つ昇っていきました。「大丈夫、いいことある」なぜだか分からないけれど、僕はその時思いました。
 で、テストの結果はどうだったんだっけ?覚えていない。京都のお嬢様は一番の成績だった。そう、いつだって女の子の方が現実的で、ぬかりないのです。僕は喫茶店の窓際の席を立ちました。帰る時、左隣りの女子高生の声がしました。「やっと空いたよ。これで荷物が置ける」

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