育てる 育つ

育てる 育つ
遠山あき

 七十一歳になる娘から誕生祝いの絵手紙が届いた。九十五年も前の遠い遠い私の誕生日である。
「転んでも転んでも立ち上がれる娘に育ててくれてありがとう」 そして赤いダルマさんの絵が描いてある。起き上がり小法師の絵だ。じっと見つめて私は胸がつまった。「育ててくれて……」だと。
 この娘を育てる頃の私は自分が大家族の中で生きていくことに精一杯で、子供は丈夫で生きてさえいてくれればいいとしか思えなかった、足りない母親であった。子供は母親の慈しみがどんなに欲しかったろう。その求めにどれだけ応えてやれたろうか。淋しい時もあったろう、悲しい時もあったろう。そんな時、私は母親として恥ずかしいほど足りない人間だった。自分のことしか見えなかった。そんな母親の背を見つめながら子供はじっと耐えていたに違いない。だから子供はみんな強い子に育ってくれたと省みて、いつも申し訳ない思いに襲われる。
 特にこの長女は、そんな未完成な母親の私を、幼心で精一杯に庇ってくれたことさえあった。「育てた」のではなかった。そう「育って」くれたし、それからの厳しい人生を過ごす時、自らを自らの力で育ってきたのである。決して私の力で育てたのではなかった。
 娘は娘なりに様々な苦労に打ち勝って今まで生きた。まだまだ様々なことに遭遇するだろう。そうしてこれからも人間として育っていってくれるだろう。
「私が育てたのではありません。自らの力で育ってくれたのです」
 だるまさんの絵がにじんで、ぼやけていった。

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